スペース物論説 正義の拳振る朝毎、大局観はあるが物足りない読売

注意喚起こそが肝要

朝毎が小さな正義の拳を振り上げ、日経が一企業の野心的挑戦に期待を寄せる中、大局観のあるテーマを取り上げたのが読売だった。9日付「中国の宇宙開発 『平和利用』に疑念が拭えない」では、中国独自の宇宙ステーション「天宮」が本格的運用の時代に入ったことを取り上げた。

要約すると「力による現状変更」を続け、台湾を含め、周辺地域への軍事的威嚇を強めている中国が、宇宙空間については平和的利用と国際協調推進を強調するが疑念を拭えないというものだ。

かつて世界一の発行部数を誇りギネスブックにも認定された読売は、往年の1000万部から300万部近く減紙を余儀なくされているとはいえ、今なお日本一の発行部数を出している大組織だ。しかし、大きな組織の保持を考慮すると書きたくても書けないことが出てくる。組織の重さは、時に言論の鋭利さを押しつぶす。同社説も問題意識は共有するものの、突っ込みに欠ける隔靴掻痒(かっかそうよう)のいら立ちが募る。

同社説で言及した「中国は施設を『全人類の宇宙の家』にすると強調し、全ての国に開放すると宣伝している。ドイツやイタリアなど17か国が参加し、科学実験などを行う」というなら、「宇宙開発における中国の影響力の増大を示している」と結論付けるのではなく、西側諸国の技術が吸い取られないよう注意喚起を促すことこそが肝要だろう。

中国は2007年、衛星攻撃兵器の実験を行い、標的とした衛星を破壊した。3000個以上の破片が、今も人工衛星の脅威になっている。宇宙のゴミと称されるこうしたものは、小さなものであっても高速で周回しており衛星を破壊しかねない安全保障上のリスクだ。こうした事柄一つを取ってみても、公共財として宇宙開発に乗り出しているわけではないことは明々白々だ。