
解散呼び掛ける東京
政府の有識者会議が防衛力強化に関する報告書を岸田文雄首相に提出した。
これに対し、先月27日付毎日社説「防衛力強化の増税案 説明なく痛み強いるのか」は、「会議はわずか4回しか開かれず、急ごしらえの感が否めない」と、拙速を慎むような言い回しをするが、今求められているのは、激変するわが国の安全保障環境に対応できる骨組みの早急な構築であってパーフェクト解答ではない。批判するなら、あくまで新防衛力構想の実効性についてであるべきだ。
一方、同23日付東京社説「防衛力強化提言 増税なら国民に信問え」では、「五年以内に防衛力を抜本的に強化するため、増税の必要性に言及しているが、国民に幅広く税負担を求めるのなら、衆院解散・総選挙で信を問うべきだ」とし、安全保障政策の転換は「国民の幅広い理解を得ずに強行することがあってはならない」とした。
だが、民主主義国家の政権は、選挙の洗礼を受けた上で国民から権力を委託された存在だ。
とりわけ現在のわが国を取り巻く安全保障環境は、緊迫度を高めこそすれ猶予ならない時期にきている。インド太平洋におけるパワーバランスは大きく変化し、周辺国などが核ミサイル能力を質・量の両面で急速に増強しているからだ。
こうした何があってもおかしくない緊急時に、権力の空白があってはならないはずなのに、あえて衆院解散を呼び掛ける東京の安全保障感覚の異常さが問われる。



