名簿差し替え疑惑も
さて、冨名腰氏は同記事で赤いファイルに言及し「『習氏や栗氏が見せないようにした』との説があるが、あり得ない」と断定。理由は「胡氏は議事進行を担う主席団の一人であり、事前に内容を知る立場だ。退席前に投票を済ませた様子も、国営中央テレビが閉幕後に報じている。名簿を見なければ投票はできない」ともっともらしく書いた。
だが、これも建前論に過ぎる。今回、浮上した最大の疑惑は、胡氏や江沢民氏ら長老グループに示していた中央委員や政治局委員、政治局常務委員など今後5年間の共産党幹部の名簿と今回、決まった名簿が違っていたというものだ。冨名腰氏は、この疑惑を覆す証拠を示し切れていない。
なお同記事で冨名腰氏は、胡氏を知る党関係者への取材で「胡氏は現役の人事に口を出さない。それは彼の哲学だ」とのコメントを紹介している。3カ月前までは確かにそうだった。胡氏は前任の江沢民氏から総書記を受け継ぐ時、軍事委員会主席の座は江氏に握られたまま院政を敷かれ、窮屈な政局運営を強いられた。
だからこそ後任者の習氏には、すべての権力を譲り渡し、院政も敷かず、「口出しせず」と約束した経緯がある。
むしろ、「私も降りるから、江氏を含めすべての長老は院政をやめる」という抱き込み心中のような内規をつくり、習氏にフリーハンドを与えた。そういう意味では、習氏にとって胡氏は2期10年を支えた恩人だ。



