財政支出29兆円超の総合経済対策に右も左も「規模ありき」と総批判

国会で政策について話をする岸田首相=国会議事堂、10月3日(UPI)
国会で政策について話をする岸田首相=国会議事堂、10月3日(UPI)

負担軽減策には理解

10月29日付読売「補助金頼みでは克服できない」、朝日「財政規律の喪失を憂う」、日経「巨額の痛み止めを盛る経済対策の危うさ」、産経「実効性より規模を優先か」、東京「賃上げの具体策を欠く」、30日付毎日「暮らし第一と言えるのか」、11月1日付本紙「消費の下支えに万全を期せ」――。

先月末に政府が決定した総合経済対策に対する各紙の社説見出しである。列挙した通り、保守系紙も左派系紙も厳しい文言が並び、批判のオンパレードである。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題では、マスコミ報道に流されて方針を一日で転換して朝令暮改を、今回の経済対策では自民党内の圧力に押されて、規模が膨れ上がったと批判されている。基本的な哲学が定まらず、根無し草のように流されっぱなしの様相である。

もっとも、経済対策の中身はともかく規模に関しては、ロシアのウクライナ侵攻や歴史的な円安の影響もあって、食料品や電気、ガス、ガソリンなどの値上げが止まらない状況にあるから、各紙が声高に批判するほどのものではないだろう。

今回の対策で負担軽減が目玉となった電気とガス料金は、9月に前年同月と比べて20%以上、値上がりしている。その打撃は低所得者ほど大きいから、読売などは「負担軽減の対策を講じることは理解できる」とする。

日経も「急激なエネルギー高騰に一定の激変緩和は必要」とするが、「だが、それは低所得世帯や零細企業など、特に打撃を受ける対象に絞るべきだ。富裕層や大企業まで、国が一律に痛み止めをするのは不適切だ」というのが批判の理由である。東京、毎日も富裕層への一律軽減を問題視し「不公平感も増す」(東京)などと批判した。

一理あるが、2023年1月からの実施で対策決定を急いだため、線引きを決める余裕が乏しかった、また一律の方が簡便でスピーディーということもあったのだろう。