テロ対策を論じない各紙社説、関連社説の9割が教団と国葬の左派紙

警備強化反対なのか

これと対照的なのが①のテロ対策である。保守紙は6本扱っているが、左派紙はそれぞれ1本あるのみ。それも事件翌日の7月9日付社説のもので、それ以降は皆無である。②の要人警護は東京には一切なく、朝日は事件直後の1本だけだ。8月26日に警察庁が要人警護の報告書を発表し警備強化を打ち出したが、朝日と東京は社説で論じることすらなかった。

これは解せない。朝日は7月12日付社説で「『失態』を検証し説明せよ」と叫んでいたではなかったか。それがいざ検証結果が出ると沈黙である。本音は警備強化に反対なのだろう。今年3月、札幌地裁が街頭演説中の安倍首相(当時、2019年参院選)にヤジを飛ばした男女2人を排除した北海道警の行為を違憲とした判決を「裁かれた道警 許されぬ憲法の軽視」(同29日付社説)と、国家権力の横暴と論じていたことが思い出される。

それにしても左派、保守を問わずテロリスト対策をほとんど論じていないのは異様である。事件直後には「ローンウルフ」(一匹おおかみ)についての論評があるにはあった。例えば、毎日の大治朋子専門記者は「ローンウルフは模倣する」(7月19日付「火論」)と警鐘を鳴らしていた。

同日付の検証記事では米国の学者らの調査を紹介し、個人的な苦悩や不満が社会性や政治性を帯びて「大義」として昇華され、「トリガー(引き金)」に至るとし、それを止める手だてについて論じていた。が、それっきりである。