1ドル=140円台と24年ぶりの円安水準でも対策に言及しない日経

円安の利点のみ強調

今回の140円台への円安進行は、さらに業界にとってはコスト増要因として重くのしかかることになり再値上げが必至となり、家計をさらに悩ますことになるのである。

それなのに、日経は円安については「輸入物価の上昇を通じて家計の実質的な購買力を押し下げる負の効果がある」の一言だけ。しかも、そのすぐ後に「が、メリットも小さくない」と続けて、前述した「円安の利点」強調するのである。

もちろん、円安の利点を生かすことは悪いことではない。

同紙が指摘するように、円安によって外国企業にとっての対日投資のコストが切り下がるので、海外の資金を呼び込むチャンスで、半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)による熊本での工場新設が良い例である。

また、外資の流入は新たなビジネス機会や雇用をつくるだけではないという。「優れた人材やノウハウ、技術が入ってくることで、日本全体の生産性を高める効果が期待できる」というわけである。

同紙が挙げる円安の利点を生かすもう一つの柱は、人のインバウンド拡大で、これへの政府の対応は「不十分といわざるを得ない」という。新型コロナ対策としての有効性が疑問視されているにもかかわらず、外国人観光客の訪日を厳しく制限しているからである。

こうして「円安で資本と人のインバウンド拡大を」(社説見出し)ということで、確かに前向きと言えば、そうとも言えるが、円安への対応策は一切言及がない。円安阻止への対応についても全く触れず、ハナから諦めているような感じなのである。