
一歩引けば一層威圧
ペロシ米下院議長の台湾訪問に猛反発した中国が、挑発的軍事演習を続けた。
中国人民解放軍は台湾を取り囲むように6カ所の海空域を設定、「台湾封鎖」を想定した演習だとみられている。
中国本土から発射された弾道ミサイルが各演習エリアに着弾し、その一部は台湾上空を通過したばかりか、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発が着弾した。
台湾国防部は、中国人民解放軍の航空機や艦船が頻繁に台湾海峡の中間線を越え、台湾側に進入したことを明らかにした。
習近平国家主席はペロシ米下院議長の訪台前にバイデン米大統領と電話会談し「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」と恫喝(どうかつ)していたが、10日付東京社説「『火遊び』で済まぬ危険」や同日付け読売社説「台湾威圧の常態化は許せぬ」で、どちらも「火遊びしているのは中国自身」だと批判した。
ただ「あらゆる問題を対話によって解決していくことが肝要だ」とするお花畑の東京社説は、「ペロシ議長は台湾訪問を自重すべきであった」とも書く。だが中国という国は、こちらが引けば向こうも引くといった紳士的態度を期待できないどころか、むしろかさにかかって一歩も二歩も前に出て威圧してくる。
中国外務省の趙立堅副報道局長は、ペロシ氏訪台を「中国軍は決して座視しない」と威圧したが、その威圧に負けて訪台を中止していれば、次はちょっとしたことでも威圧し米国の行動に縛りをかけてくるのは必定だ。
ましてや中国は、チベット自治区や新疆ウイグル自治区で少数民族に対する人権侵害や、香港の民主活動家への厳しい取り締まりなど西側社会では考えられない強権統治社会であり、南シナ海の軍事基地化など独善的な安全保障問題もある。それらを少しでも批判しようものなら、発言主体の手足を縛る第2、第3の脅しが迫ってくるだけだ。



