中国の挑発的軍事演習、「火遊びしているのは中国自身」と読売・東京

反撃能力必要な日本

その点、本紙5日付社説「中国ミサイル 緊張高める挑発は許されぬ」は、「中国は米空母が南シナ海や台湾周辺に接近することを阻止するため、対艦弾道ミサイル『東風26』や『東風21D』を配備。音速の5倍以上の『極超音速』や変速軌道で飛ぶミサイルの開発も進んでいる」とし、「日本を攻撃する他国のミサイル発射拠点に打撃を与える反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を急ぐべきだ」と硬派の社論を展開した。

なお「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」との言葉通り、中国の常軌を逸した強硬姿勢がやがて自分に跳ね返ってくるとくぎを刺したのが産経の11日付「宮家邦彦のワールドウオッチ」だ。

宮家氏は、ペロシ氏の台湾強行訪問を短期的には三方勝利の「出来(でき)レース」だと見る。

「ペロシ議長は信念を貫き、中国共産党総書記でもある習近平国家主席は党大会を前にして3期目を固め、バイデン大統領はレームダック回避を目論(もくろ)む」3氏の短期目標は達成できたからだ。

だが、「中長期的に見れば中国側の対応は戦略的判断ミスだろう」というのが宮家氏の見立てだ。

戦略的過ち犯す中国

宮家氏のオピニオン力の強さは、歴史から掘り起こした大局観に基づくことが多い。

今回は大戦前のわが国を素材に「1930年代、日本は対米関係で戦略的判断ミスをし、日米開戦、敗戦に至った。正しかったのは対米強硬派でなく対米協調派だった。中国は同種の戦略的過ちを犯しつつある」と述べ、個人的提案ながら「今からでも遅くはない」と習近平氏に中国の対米政策変更の決断を迫っている。

5年に1度開催される共産党大会を秋に控える中、強硬路線でナショナリズムを煽(あお)り14億人の国を束ねようとしている習氏がとてものめるとは思えないものの、本当の「良薬は口に苦い」ものだ。

(池永達夫