KDDI大規模通信障害に業界全体で再発防止・低減に臨めと各紙

緊急通報の対応急げ

通信会社が障害を起こした場合の、対策として3紙が挙げているのが「ローミング」である。

ローミングは、一社が障害を起こした際に別の携帯電話会社の回線を使えるようにするもので、これを「ネットワークの強靭(きょうじん)性を高める方策の一つ」として詳しく指摘したのは、8月2日付毎日である。

ローミングは、国境をまたぐ移動が多い欧州では広く活用されており、国内でも2011年の東日本大震災後に議論された。では、その時、ローミングがなぜ実現できなかったのか。

毎日は、当時普及していた第3世代通信規格(3G)は会社によって方式が異なるといった事情から先送りされたが、現在主流の4G以降では方式に違いがなく、緊急通報などでのローミングは可能という。

通信大手も前向きな姿勢を見せているが、同紙は他社の回線で通報をした場合、いったん電話を切ると着信側からかけ直せない課題があるとして、「こうした問題を解決する技術の開発や、緊急通報への対応手順の見直しなど、政府には環境整備を主導してもらいたい」と強調する。尤(もっと)もな指摘である。

この点は読売も同様で、「システム改修や費用負担など課題は多いというが、人命に関わる緊急通報だけでもできるよう、国と業界は対応を急ぐべきだ」と説く。

今回のKDDIの通信障害では、新型コロナの第7波が急拡大する中、消防や警察への緊急通報もつながりにくくなったり、体調を崩した高齢者や山で遭難した人が通報できないケースがあったりしたというから、読売の言う通りである。

110番などの緊急通報については、総務省も緊急ローミングを検討すると言い、1日付日経も「地震などの災害時にも威力を発揮すると期待される。ぜひ実現を急いでほしい」と訴える。