孤独な若者とネット社会が憎悪の増幅へ

インターネットが「内」と「外」の分断を助長

他国に比べて、日本で孤独感を抱える若者が多い背景について、石田は歴史的経緯から次のように分析している。

日本は、集団的圧力によるしがらみが強い社会で、かつてはその「社会の同調圧力」が戦争に向かわせた。その反省から「集団意識ではなく個人の意思を尊重するような社会」が目指されてきた。石田は触れなかったが、そこに決定的な役割を果たしているのが戦後憲法だ。

高度経済成長期以後は、経済的な面からも「個人化」が加速した。東北の農村出身の筆者も実感することだが、「たとえば農村では、畑や道具、食料を集落で管理していた。各家庭をみても個室ではなく、食器や洋服も家族や親せきで使い回していました」。つまり「かつては一つのものを人びとと調整しながら共有するのが日本社会の姿だった」。しかし、今はテレビの「チャンネル権争い」が死語となるばかりか、子供もスマホを持ち、自分の部屋で一人、ユーチューブを楽しむ時代になっている。

そこに、都市部への人口流入が重なっている。経済成長によって、地方から都市部に出て働き、そこで核家族をつくる一方で、地方では高齢者が取り残される。最近では、結婚しない人が増えている。

今年の「少子化社会対策白書」によると、2020年の生涯未婚率は男性28・3%、女性17・8%。未婚率は今後も上昇し続けることが予想され、「これまでは、当たり前に結婚して家庭を築き、夫婦二人で老後を過ごす社会が、誰とも結婚せず生涯を終える社会へと変容した」のだ。

このようにさまざまな要因から「個人化が進んだことで、孤独・孤立問題は加速」していくとともに、ネットの普及などで「誰とも会わなくても生活できる社会」を作り出してしまったのが今の日本だ。それでもお金があれば生活していけるが、経済的に困窮すると、人と人の結び付きがないのだから、誰にも頼れない。

「他者と関わらずに自己完結する社会が加速すると、困ったときに誰かに頼る人は、一人で解決する能力がないというレッテルを貼られてしまう。だからこそ、日本社会ではなかなか誰かに助けを求めにくい現状がある」と石田は分析する。