防衛白書社説、ストレートの日経・読売、論点ずらしの朝日

東京「緊張高める」は詭弁

その意味では東京は、26日付社説「防衛白書 予算倍増の説得力欠く」でガチンコ勝負に出たが、暴投もいいところだ。

同社説では「欧州のNATO加盟国はロシアと地続きの上、相互に防衛義務を負う。韓国は北朝鮮と軍事境界線を挟んで対峙(たいじ)している。日本とは安全保障環境が異なる欧州各国や韓国との比較で防衛費の倍増を訴えることには無理がある」と述べるが、海を挟んで安全保障を担保する方がよほど装備も予算もかかる。

政府は年内に「中期防衛力整備計画」を改定し、来年度以降5年間の防衛費の大枠を定める。

これに対し同社説は、「『数字ありき』で防衛力を増強すれば、周辺国には脅威と映り、地域の緊張を高めかねない」として「『平和国家の建設』を踏み外さぬよう重ねて求める」と締めくくった。

無論、数字目標だけ追って必要不可欠な軍の近代化に遅れを取るようなことになれば何の意味もないが、東京が言う防衛力増強が地域の緊張を高めかねないというのは的外れだ。

反戦論者は「防衛力増強が相手国の疑心暗鬼を生み、さらなる防衛力強化競争という負のスパイラルに入って地域は不安定化する」などと言うが詭弁(きべん)にすぎない。強盗が徘徊(はいかい)し始めたら、鍵をちゃんと掛けたか確認すると同時に、防犯ベルなどそれなりの装備も必要となる。

なお白書が強調したのはロシアと中国の軍事協力の深化で、「懸念を持って注視する」と記した。

昨秋、中露の海軍艦艇10隻が演習で日本を周回し、今年5月、両国の爆撃機6機が日本周辺を共同飛行したことを社説で取り上げたのは読売と日経だけだった。日経はその事実をただ羅列しただけだったが読売は「単なる示威行動ではなく、実戦を意識しているとの見方も出ている」と一歩踏み込んでいる。