中国籍なら国防義務
なお「サハリン2」問題で、ロシア産の資源に頼ることのリスクが鮮明になったが、記者が強調したいのはチャイナリスクの存在だ。
中国は2010年7月1日、有事に国家総動員を発令できる「国防動員法」を制定。昨年10月の全国人民代表大会(全人代)常務委員会では、この「国防動員法」を習近平政権の意向で法的手続きなく変更できることを決めた。習政権がひとたび「有事」と判断すれば対中進出している日系企業も含め、中国のあらゆる組織のヒト・カネ・モノの徴用が合法化され、戦時統制下におかれる懸念があるのだ。
例えば第31条には「召集された予備役要員が所属する単位(役所や企業など)は兵役機関の予備役要員の召集業務の遂行に協力しなければならない」とある。予備役要員は中国国籍の男性18~60歳、女性18~55歳が対象となり、有事の際には中国の敵国に関する情報収集任務が与えられることもあり得る。
日系企業の中国現地法人が雇用した中国人従業員が同法に基づき予備役徴用され職場を離れた場合でも、雇用側は給与支給など待遇継続義務が生じる。同時に、社内情報などがすべて合法的に軍当局に伝えられることになる。しかも中国国内だけではなく、日本など海外滞在中でも中国国籍保持者は「国防勤務を担う義務」がある。
その他、54条や63条が適用されれば、現地工場の生産設備や物流のためのトラックなどのモノが根こそぎ徴用され、日系企業の中国の銀行口座凍結や金融資産接収のほか、売掛金放棄も迫られかねない。
中国に進出している邦人企業数は約1万3600社。中国が台湾接収に動くなど有事になれば、がらりと様相が変わるチャイナリスクの震度の大きさは、ロシアリスクの比ではない。



