止まらぬ円安、求めるべきは日銀の対応、それとも企業の賃上げ?

日銀には甘く、企業に強く対応を求める

そんな読売が第一に求めたのは、「各企業がボーナスを含めて従業員への還元を徹底し、賃上げの流れを力強いものにすべきだ」という企業への賃上げである。

企業の内部留保は昨年3月末時点で484兆円に膨らんでいるのに、今春闘の集計で大企業の賃上げ率は約2%にとどまった。「景況感の低迷を、賃上げの抑制につなげてはならない」という厳しい注文である。

また、ウクライナ危機は長引くとみられ、資源や原材料の価格高騰は続く可能性が高いとして、「賃上げを続けるためにも、企業は経営戦略を再構築することが急務である」として見出しのような注文が続く。

政府には中小企業の社員や非正規雇用にも賃上げが波及するよう、人への投資を促す施策を積極的に拡充してほしいという具合であるが、日銀に対しては一言もない。

急激な円安は日米金利差の拡大が大きな背景であり、日銀の大規模金融緩和策の継続が円安の進行を招く要因になっているのは周知のはずだが……。企業への注文が厳しいだけに、日銀への甘さがひときわ目立つ印象である。

日経は、見出しとしては景況悪化への警戒を説いたが、大意としては、グローバルな資源高や供給制約そのものに打つ手は限られるとして、「目先の打撃を和らげるきめ細かな対応とともに、中長期の成長に向けた道筋を示すことが大事だ」とした。

景況への警戒は、「今後、企業が採算改善を狙ってさらに価格転嫁を進めれば消費に水を浴びせかねない」からだが、これはその通りである。

日経はその際、「カギになるのは賃上げとのバランスだ」という。賃上げで家計の実質所得と消費を底上げできれば、日銀が目指す物価と賃金上昇の好循環が期待できるというわけである。