倫理的問題に触れず
NHKの報道姿勢で、さらに問われなければならないのは、妊娠の倫理的問題に触れなかったことだ。「(カップルの)共通の知人から精子の提供を受けて、出産した」と説明するばかりで、母親がどのような方法で妊娠したのか、また精子提供者と子供との関係や子供の出自を知る権利はどうなるのかなどについては完全に無視。彼女たちの出産・子育てには、深刻な問題が横たわっていることは、誰にでも理解できるのに、彼女たちの言い分だけを紹介するのはあまりにも無責任ではないか。
米国では、精子・卵子提供、代理出産といった生殖補助医療で同性カップルが子供をつくることは珍しいことではなくなっている。日本産科婦人科学会の指針で、生殖補助医療が制限されている日本と違い、米国では規制がなく、生殖ビジネスが盛んだからだ。
NHKはこれまでにも、精子提供を受けて出産したレズビアンを何度か紹介している。いずれも子供を生み・育てる側に立ち、子供の人権や生命倫理をスルーしていた。あたかも公共放送で取り上げることによって、こうした非倫理的な出産を日本でも増やそうとしているかのような内容で、今回も同じだった。



