
様変わりの国民意識
「日本を変えたウクライナ・ショック!」というから、広げてみれば、「ゼレンスキーのフリース」だの、「ロシア産ウニ3割安の不可思議」だの、小ネタを集めた特集だった。サンデー毎日(6月19・26日号)である。
巻頭に持ってきたこの特集の最後の記事が「防衛費の問題」。構成をひっくり返したような順番だが、これすらもウクライナ侵攻事態によって引き起こされた安全保障を議論する記事ではなかった。防衛費増額を進めている自民党“防衛族”が「あの人の暴走」に眉をひそめている、といういわば小ネタの一つ。
ウクライナ・ショックはこれまでの世界を一変させた。世界を食糧危機、エネルギー危機に巻き込んだだけでなく、日本人の安保感覚にも大きな衝撃を与え、「戦争とは何か」「侵略とは何か」「国を守るとは何か」といった生の根源的な問題を突き付けている。
週刊誌がこの“重たい”話題を扱うべきかどうかは、それぞれ考えがあるだろうが、それにしても、同誌の編集には“まじめ”さが足りないと感じる人は多いのではないか。
件(くだん)の「自民党国防族が困惑する“あの人”の暴走」の記事を見てみる。困惑しているのは「衆院安全保障委員長を務める大塚拓衆院議員」。そして“あの人”とは安倍晋三元首相である。
ロシアのウクライナ侵攻ではっきり分かったことは、「天は自ら助くる者を助く」であることだ。日米同盟があるといっても、米国は本当に日本が侵略を受けたときに助けてくれるのか。軍の発動には議会承認がいる。日本が自衛していて、初めて同盟国が支援に動き出す。そのことをウクライナはまざまざと見せつけた。
だから「国民の意識も様変わり」した。同誌は、毎日新聞の調査を引用して、防衛費の「増額賛成が76%に達している」と記している。なのに同誌は防衛費増額論が「ウクライナ侵攻に便乗したかのような」という。「便乗」ではなく、「促す切っ掛け」となったのにだ。




