首相肝いり「新しい資本主義」 各紙は批判の嵐

産経少し言い過ぎか

意外だったのは、保守系紙の厳しい論調である。読売は、「貯蓄から投資へ」の流れを作り、経済活性化に生かす狙いは理解できるが、かねて指摘されていた課題だとし、「『新しい』と冠した施策の柱となる要素は乏しい」とやんわり批判。

そして左派紙と同様、「さらに、計画案は、成長に軸足を置くあまり、分配を重視する政策が影を潜めてしまった」と指摘し、具体例として分配の要となる賃上げ促進について、「賃金を増やした企業への税制支援策の活用などを挙げただけで、新たな目玉施策は見当たらない」とした。

産経は、読売より批判のトーンが強い。

実行計画案は、日本では成長の果実が適切に分配されず、従業員給料などに十分回らない「目詰まり」があるとしている。産経は「これを解消すべきだという問題意識は妥当である」としつつも、「(賃上げ支援など)より抜本的に格差是正を図るには、高所得者への富の偏在を抑制できるよう、税制などを通じた所得の再分配を併せて講じる必要があろう。岸田政権はそこまで踏み込もうとはしない」というわけである。

首相の「新しい資本主義」は新自由主義的な政策が格差拡大を招いたとの反省から、中間層の底上げによる格差の是正を目指していた。

しかし、その手段は(首相が当初掲げ、その後、市場の反発から引っ込め、今回の行動計画に入らなかった)富裕層を念頭に株式の売却益になどに対する金融所得課税の強化とは限らいないはずである。中間層への減税の方が適切かもしれない。産経は少し言い過ぎか。