河野太郎氏への警戒論 「反日政権」という“悪夢”

記者会見で自民党総裁選への出馬を表明した河野太郎行革相=2021年9月10日午後、衆議院会館
記者会見で自民党総裁選への出馬を表明した河野太郎行革相=2021年9月10日午後、衆議院会館

“岸田降ろし”で現実味増す

保守陣営の中で河野太郎消費者問題担当相への警戒論が広がっている。自民党の保守派議員を中心に、「選択的夫婦別姓」「同性婚」に賛成するとともに、「反原発」でリベラル志向の強い河野氏へのアレルギーは以前からあった。岸田政権の支持率続落と相次ぐ閣僚辞任で“岸田降ろし”の動きが出始めるに伴い、“河野政権”誕生が現実味を帯びてきたことで警戒感が高まっているのだ。

保守系月刊誌「Hanada」12月号に、論考「岸田降ろしで『河野太郎総理』の悪夢」を寄せたのは文藝評論家の小川榮太郎氏。

昨年の自民党総裁選で、河野氏は自民党党員票で、岸田首相や高市早苗氏(現経済安全保障担当相)を抑えてトップになった。安倍晋三元首相が銃弾に倒れた後は、高市氏の政治的求心力は落ちている。その一方で、「首相になってほしい人」の一番手に挙がるのが河野氏だ(毎日新聞の世論調査)。

前回の総裁選の時、小川氏は安倍氏から「河野さんだけは総理にしてはならない」との河野評を聞いていたことを明らかにしている。なぜなら、「河野さんは結局ポピュリストだったね」と、安倍氏は強調したという。

河野氏は総裁選で選択的夫婦別姓、同性婚への賛意を表明した。また女系天皇を容認する一方で、原発反対派だ。それに加えて防衛大臣時代、地上配備型迎撃システムのイージス・アショアの計画を突然中止した。

さらに小川氏は、週刊誌の報道を挙げて、「祖父・河野一郎の代からの一族企業の『日本端子』等から政治献金」を受け取っていることなどを指摘し、中国の影響力が及ぶことへの警戒心を隠さない。日本端子は中国国内に製造拠点として海外子会社を持っている。これら河野氏の政策や周辺事情は「反日マスコミの歓迎するものばかり」。その上、ポピュリストだとすれば、河野氏が首相の座を手に入れることが「悪夢」というのもうなずける分析だ。

一方、小川氏は「私は、これまでも再三、統一教会問題のようなマスコミの無理筋のストーリーに迎合すれば政権は短命に終わる、と本誌にも書き、岸田総理自身にも直言してきたが、いまのところ、局面転換はできていない」と嘆く。反共で知られる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)バッシングも「反日マスコミ」による悪夢の現実化ストーリーの中で読むと、分かりやすい。

一方、自民党内の岸田政権への不満については、ジャーナリストの氷川貴之氏が保守系月刊誌「WiLL」1月号に寄せた論考「吹きはじめた“岸田おろし”の風」で詳しく書いている。

閣僚辞任に伴い表面化した官邸と自民党との意思疎通の欠如や国会運営における機能不全などで、「戦略的思考の欠落が白日の下にさらされた」ことで、自民党保守派議員だけでなく、公明党の中にも「岸田政権は官邸にも国対にも素人しかいない」と嘆く議員がいるという。国会で与党が圧倒的多数を占めているのに、国会運営の主導権を野党に握られているのだから、むべなるかなの状況である。