河野太郎氏への警戒論 「反日政権」という“悪夢”

年明けの「菅」「河野」の動き

こうして岸田降ろしが動き始める中で、氷川氏は「岸田首相側近が最も警戒するのは前首相の菅義偉だ」として、次のようなコメントを紹介している。

「今の自民党で政局を動かせるのは、菅さんくらいだ。菅さんが年明けにも自らの派閥を立ち上げようとしているという動きは把握している」

そして、「菅が派閥を立ち上げ、気脈を通じている二階派や森山派と足並みを揃えれば、一気に八十人近い非主流派の勢力を築き上げることができる」というわけだ。そこで問題となるのは、非主流派の総裁候補として誰を担ぎ上げるかだが、ここでも名前が挙がるのが河野氏。菅氏は一貫して同氏の改革力を評価し推しているのだという。

その一方で、氷川氏は、ここでも小川氏と同じように「河野は首相にしてはいけない」という安倍氏の生前の言葉を紹介しながら、保守派議員に根強い“河野アレルギー”があることを強調する。そこで「もう一人の本命候補」として名前が挙がるのが萩生田光一政調会長。「菅は自身と同じ地方議員からの“叩き上げ”である萩生田を『自分と政治センスがよく似ている』とかわいがっている」からなのだという。

いずれにしろ、岸田政権の支持率が下がり続け、首相が7月の参議院選勝利で手にしたはずの「黄金の3年間」はすでに消えて崖っぷちに立つ中で、河野氏の存在感が増している情勢に変わりはない。

旧統一教会問題では、解散命令請求を視野に入れた質問権行使の必要性を盛り込んだ「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」報告書を提出(10月17日)するなど、教団解散の“急先鋒(きゅうせんぽう)”と目されている。

岸田首相はその日のうちに、永岡桂子文部科学相に質問権行使を指示している。首相が河野氏を入閣させたのは、いわば口封じだったのかもしれないが、逆に越権行為とも言えるスタンドプレーを許す格好となっている。

消費者担当相として、河野氏が霊感商法対策に積極的な姿勢を示し、しかもそれをマスコミが報じる構図について、小川氏は「つまり、統一教会問題を解決できない『グダグダ』の岸田総理に対して、『クリーンで決断力のある改革者』としての河野氏という構図が、先行して作り出されつつある」と分析する。

さらに河野氏で懸念されるのは、「権力行使に自制的な政治家でないことは、官僚たちの多数の証言がある」(小川氏)。例えば、規制改革担当相だった昨年8月、再生可能エネルギーの比率を巡り、資源エネルギー庁の官僚に「日本語わかるヤツ、出せよ」と恫喝(どうかつ)まがいの言葉を吐いたことは、週刊誌が報じてよく知られている。

そんなこともあって、小川氏は「総理になった時の河野氏が暴走しない理由はない」と警戒感を露(あら)わにする。河野氏の政策が「反日マスコミの歓迎するものばかり」だとすればなおさらである。

だからこそ、小川氏は「天にも祈る気持ちで、岸田総理よ踏ん張ってくれ、保守派の諸氏よ、小異を捨てて岸田総理を支えてくれ、と叫ばずにはいられない」と、祈るような心情を吐露している。しかし、岸田首相が旧統一教会問題でマスコミの無理筋ストーリーに迎合していたのでは、自ら足を泥沼に突っ込むようなものだ。岸田首相が持ちこたえるのか、それとも「悪夢」が現実のものとなるのか。それとも自民党に第三の道があるのか。

(森田 清策)