少子化問題の解決、補助金の増額だけで良いのか?

家族のイメージ(Photo by Jessica Rockowitz on Unsplash)
家族のイメージ(Photo by Jessica Rockowitz on Unsplash)

同じ事件、違う記事

論説室長時代、上司の井上茂信論説委員長にはいろいろ教えていただいた。井上氏は産経新聞ワシントン支局長、論説副委員長を経て退職後、長く弊紙論説委員長の職責をこなされた。不思議なことに、その仕事ぶりより昼休みなどでのちょっとした雑談が強く記憶に残っている。その一つが、毎日新聞の名物記者だった大森実氏と同じ自殺記事を書きながら、一方は社会面トップ記事になり、自分の記事は社会面ベタ記事になったというものだ。

自殺は事件性のあるものではなく、若いOLがビルの屋上から飛び降りたものだった。失恋か仕事上の悩みかに起因すると思われた。井上氏はそつなく事実を記事にし、ベタ記事として社会面の片隅に掲載された。ところが大森氏の記事は、社会面トップだった。驚いた井上氏は、食い入るようにして大森氏の記事を読んで納得した。

大森氏がスポットライトを当てたのは、寒い暮れの夜、うら若い一人の女性がビルから身を投げたということではなかった。その夜、人だかりの真ん中でしばらく死体が放置される中、たまたま通りがかった米軍将校が自分のオーバーを脱いで、横たわっている女性にそっとかけたまま、立ち去っていったことに焦点を当てて書いた。それを大森氏は、アメリカの民主主義の魂を自分は見たとうたい上げたのだ。