少子化問題の解決、補助金の増額だけで良いのか?

扱い分かれた一時金

長くなったが、15日付の出産クーポン券記事も似たようなことが起こった。今回は毎日が同ニュースを、「出産家庭にクーポン」と1面3段のへそ記事扱い。へそ記事というのは、トップ記事、肩記事に次ぐ3番目の記事でレイアウト上、紙面の真ん中辺りとなるのでそう呼ばれる。日経も、『出産一時金「大幅に増額」』と、4面の3段記事扱いだった。

一方、読売は『「出産準備金」新設へ』と1面トップニュース扱いだ。日本の新聞はどれもこれも代わり映えがしない金太郎あめと批判される中、何が違ったのか。

毎日の報道は、「政府・与党は、0~2歳児がいる家庭に一定額のクーポンを支給する事業を始める方針を固めた」と書いた。日経も同様の報道だった。

一方の読売は、1児10万円程度と想定されている出産準備金対象者は「妊娠した女性」で、具体的には「自治体に妊娠届を提出し、母子手帳を交付されたすべての女子」とし、従来の出産祝い的補助から妊娠時点での補助金付与で1面トップかどうかは別にして、画期的であることは間違いがない。

地域等で取り組みを

たださりながら、しょせん少子化問題を金で解決しようとしていて、やらないよりはやった方がいい程度の補助金でしかない限界を解説なり社説で書いてほしかった。

特殊合計出生率(1人の女性が一生に産む子供の数に相当)が先進国トップの3・01(2019年)のイスラエルは、低利の出産ローンなど政府の補助はいろいろ用意されていて手厚いものの、出生率を押し上げている最大の理由は、子だくさんが最大の幸福という国民共通の家族観があるからだ。

ユダヤ民族は1948年に建国するまで約1900年間、亡国の民・異邦人として世界を放浪するような歴史を余儀なくされた。そのためユダヤ人の最大の財産は家族だった。多くの子供に囲まれ、それを守り抜くことが、宗教や伝統を継承していく唯一の道だったからだ。そうした家族観の構築は、教育や地域共同体の現場でも取り組もうと思えばできることだ。

(池永達夫)