
ロシアは「日沈む国」
ウクライナ戦争が始まって9カ月。解決の糸口さえつかめず、ガスパイプラインが止まった中で欧州は厳しい冬を迎えようとしている。情勢はどうなっているのか。欧州が感じている切迫感、危機感は日本の週刊誌を見ていては分からない。もっとも週刊誌とはそういうもので、これに地球的話題を求めるのは「八百屋で魚を求める」ようなもの。
情報のバランスを取るために外国誌の日本版を手に取ることになる。今週もニューズウィーク日本版(10月18日号)はウクライナ戦争を仕掛けたロシアに焦点を当てている。特集「アフター・プーチン『戦後』のロシアと後継者の姿」だ。
次の指導者がどういう人物になるかは重要だが、現体制から出てくる後継者なら、ロシアがそう大きく変わることはないだろう。「『プーチン殿』と7人の後継(候補)」の見出しは大河ドラマから拝借したものだが、それはつまりプーチン体制内から後継が出てくるという話だ。
それよりも問題は、今後、世界はどう変わっていくのかだ。今号も元外交官の河東哲夫氏、元CIA工作員のグレン・カール氏が書いている。いずれも同誌コラムニストでウクライナ・ロシア問題となると彼らが登場する。
河東氏は、ロシアは「日沈む国」だと言う。ロシアが沈めば、この地域はどうなるのか。オスマン帝国の再興を目指すトルコ、中央アジアに「一帯一路」で進出している中国、ロシアからは距離を置き始めたカザフスタンなどの中央アジア諸国、米国との核合意ができれば俄然(がぜん)存在感を増してくるイラン、等々。ここには主役を張れる役者が揃(そろ)っている。
そんな中でロシアの地位が沈むとどうなるか、「さほど影響はない」と河東氏は「ロシアの友人」の言葉を紹介する。「ソ連崩壊以来、ロシアの存在は『マージナル(限定的)』なのだ。経済力がないし、自由・民主主義といった明るい価値観も持っていないから、世界を前向きに変えることがない」と散々である。
さらに「ロシアがやっているのは、アメリカがやろうとしていることを邪魔しては自分の存在をアピールし、その邪魔をやめることで世界から感謝を受けるという、手品まがいのいかさま外交」をしているとこき下ろす。
基本的には「第1次大戦前後のオスマン帝国、あるいはハンガリー・オーストリア帝国のように、日没のベクトルの中にある」とみて、プーチン大統領が夢見る「偉大なロシアの再興」はまさに夢で終わりそうだという見立てだ。



