ウクライナ戦争後の世界の変化とプーチン後継を予測するNW日本版

二つの勢力圏に分断

カール氏はこの戦争の後に来る国際秩序について「2つのシナリオ」が考えられると指摘する。「1つは、過去80年間、規範となってきた国際秩序が強化され、ロシア政権の帝国的かつ直情的な反欧米の性質が根本的に変わること。もう1つは、世界が純粋に国力に基づいて2つの勢力圏に分断され、対立することだ」と予測する。

ウクライナ戦争に勝つか負けるかで正反対の将来像が描ける。当然の話だ。しかし、このままロシアが負けを認めず、ウクライナの一部を占領したまま、戦況が膠着(こうちゃく)して、現状のまま休戦状態になれば、どうなるのか。この点をカール氏は言及していないが、状況からしてそうなる可能性が一番高い。ロシアが核行使をためらわないと言っているからだ。その場合「2つの勢力圏に分断」されるということになる。

迫る?限定的核戦争

この「核」についてウィリアム・アーキン元米陸軍情報分析官が書いている。プーチン大統領は「国家の存立が脅かされれば」核の先制使用に踏み切ると明言した。米国は対応を熟考しているが、「核を抑止力とする冷戦時代のモデルがもはや通用しない恐れがあり、敵が核兵器を使った場合の対応も単純ではなくなってきたと危惧」する。しかし最後は「こちらも本気でハンマーを振り回すべきではないか」と思い始めているという。限定的とはいえ核戦争が迫ってきているのか。日本政府にはしっかり仕事をしてもらいたいが、国民も政府に仕事をさせるべきだろう。

(岩崎 哲)