【韓国紙】再燃する25年前の通貨危機の悪夢

9月29日、ソウルで会談し握手するハリス米副大統領(左)と韓国の尹錫悦大統領(AFP時事)
9月29日、ソウルで会談し握手するハリス米副大統領(左)と韓国の尹錫悦大統領(AFP時事)

与野党は協調政治で庶民守れ

思い出したくない25年前の通貨危機の悪夢が最近、またくすぶっている。最近、ブルームバーグ通信は1997年のようにアジア金融危機が再燃するとの憂慮が大きくなっていると分析した。“最強米ドル”の流れの中で急激な円安、人民元安になれば、グローバルファンドがアジアから資金を大量に回収して本当の危機が発生し得るというのだ。

韓国経済の大黒柱である貿易収支の流れをみれば、通貨危機に匹敵する状況だ。先月37億㌦を超える貿易赤字が発生し、通貨危機以降初めて6カ月連続で貿易赤字を記録。韓国経済研究院は今年の貿易赤字が480億㌦に達すると推算した。

ウォンの対ドル相場は1ドル=1400ウォン台まで下落し、今は1500ウォンまで脅かしている。1400ウォン台に下落したのは通貨危機と世界金融危機(2008年)の時だけだ。今年6月と7月の消費者物価上昇率は前年同期比でそれぞれ6・0%、6・3%を記録。2カ月連続で上昇率が6%台以上を記録したのは通貨危機真っ只(ただ)中の1998年10月、11月以来初めてだ。

否定的な指標を見ていると通貨危機の時のトラウマがよみがえる。果たして韓国経済は今パーフェクトストーム(深刻な世界経済危機)の中心に進入したのか、今からハンドルを修正すれば暴風を避けられる地点を過ぎつつあるのか。

まず、韓国経済の指令塔は十分に危機を回避できる方に重点を置いている。外貨準備高が十分あり、対外健全性も良好で複合危機の局面に耐える体力があるというのだ。韓国銀行の外貨準備高は今年8月4364億3000万㌦で、97年末の約21倍水準だ。対外資産も第2四半期末に2兆1235億㌦で97年の1176億㌦、2008年の5328億㌦を大きく上回る。

韓国銀行も国会に提出した懸案報告書で、「最近の為替レートの下落は米国の緊縮強化、グローバルな米ドル高という対外要因に起因しており、韓国の対内外健全性は良好である点で過去2度の危機(通貨危機、世界金融危機)とは違う」と断言している。

財政・通貨当局の判断は幸いだが油断は禁物だ。家計債務と財政の健全性、後進的な政治環境という側面で見れば、今が通貨危機の時よりかえって深刻だという指摘も少なくない。

今年第2四半期の家計債務残高は1869兆4000億ウォンで03年に統計を初めて以来最高値だ。経済協力開発機構(OECD)が集計した韓国の1世帯当たりの可処分所得と負債総額比の統計を見れば08年138・5%だったのが昨年200・7%に大幅に増加している。17年に660兆2000億ウォンだった国の債務残高はコロナ禍を経て今年1037兆7000億ウォンに達すると予想される。

家計債務と国の債務は一日で解決できる問題ではない。しかし政治環境の改善は意志の問題だ。4日に始まった国政監査で与野党が崖っぷちに立たされた庶民のための政策防波堤を設けることで、協調政治が芽生えることを期待する。

(イ・チョンジュン経済部長、10月5日付)