【韓国紙】再燃する25年前の通貨危機の悪夢

【ポイント解説】家計・国家債務と政争

経済指標だけ見れば、韓国は財政・通貨当局が言うように「過去の通貨危機の時とは違う」のだろう。外貨準備も十分で、対外資産も桁違いに多い。ところがどうしても不安を拭い切れないのは「家計負債と財政健全性」それに「後進的政治環境」だ。

中でも家計債務は、BISによれば20年9月末にGDPに対する家計債務残高が104%に迫っている。ちなみに日本は68・6%(22年6月)だ。可処分所得に対する借金も200%に達する。これは借金に対する感覚が日本と違うところから来ている。韓国では借金生活が当たり前なのだ。経済が好調ならば稼いでいつでも返せると暢気(のんき)に構えていられるが、いったん経済が悪化すると途端にショートする。

韓国ではキャッシュレス化が進んでいる。スマホ決済、クレジットカード使用が当たり前で、現金をあまり持ち歩かない。日本に旅行に来て支払いが現金のみが多く、「ジャパラゴス」(ジャパンとガラパゴスを合わせた造語)と呆(あき)れたりする。こうした金銭感覚がいつの間にか借金を膨らませている。国家債務は今年1037兆ウォンに達すると予想されている。5年前の660兆ウォンから増加の一途だ。

家計と国家の借金問題は心理や民族性、構造などからもたらされており、記事でも言うように「一日で解決できる」問題ではない。それだけに政治のリーダーシップが問われるわけだ。

1997年アジア通貨危機を乗り切ったのは、その直後にトップに立った金大中大統領の指導力に負うところが多かった。今問われているのは尹錫悦政権の舵(かじ)取りであり、与野党が協調して危機に対処できるかどうかである。だが現実は足の引っ張り合いばかりだ。

これを機に「協調政治」が芽生えてほしいとは、なんとも切な過ぎる願いではある。

(岩崎 哲)