【韓国紙】永遠の同盟も永遠の敵もない対外関係

韓国の尹錫悦大統領と金建希夫人=6月29日、マドリード(EPA時事)
韓国の尹錫悦大統領と金建希夫人=6月29日、マドリード(EPA時事)

価値より国益優先の政策を

尹錫悦(ユンソンニョル)政権の外交安保チームにとって8月は明らかに残忍な月だった。世界の自由と平和、繁栄に寄与する“グローバル中枢国家”に向かう政府の旺盛な歩みは立て続けに相手国の牽制球でブレーキがかかった。

二国関係が最も不安な国は国交正常化30年を迎えた中国だ。先月9日、韓中外相会談で外交・国防次官級対話(2プラス2)年内推進などの合意によって、「両国間の戦略疎通を充実させた」という朴振(パクジン)長官の自評に、中国外交部は「韓国政府が高高度防衛ミサイル(THAAD)の『3不1限』を宣示した」と応酬した。

核・ミサイルの高度化で体制保障と経済支援を一挙に得ようとする北朝鮮の“恐喝”戦略は韓国が新政府に代わっても変わっていない。尹大統領の“大胆な構想”に対し、金与正(キムヨジョン)労働党副部長は「われわれの国体である核を経済協力のような物と交換するという発想」だと冷笑した。

対日関係も過去の歴史問題で行き詰まっている。尹政権が光復節の祝辞等を通して、「普遍的価値をベースに両国の未来と時代の使命に向かって進もう」というメッセージを投げ掛けているが、日本は「韓国側が解決策を用意するのがわれわれの一貫した立場」という言葉だけを繰り返している。

尹錫悦政権の対外政策の中心軸である米国も国益を最優先する。先月16日に発効したインフレ抑制法(IRA)が代表的だ。

世界10位の経済強国であり、Kカルチャーの本山である韓国はなぜこういう扱いを受けるのだろうか。さまざまな情勢を勘案しても、尹錫悦政権のこの4カ月間の外交安保分野の成績表はみすぼらしい。

一つは政府があまりにも抽象的で価値中心的なビジョン・目標を提示したためではないか。海洋・大陸勢力が先鋭に対立する半島国であると同時に、数十年間、北核の脅威に苦しめられた分断国の立場で、世界の自由と平和、繁栄に貢献するグローバル中枢国家とは虚しくのどかに聞こえる。目標達成のためどのような戦略を推進するかも聞いたことがない。確固たる原則と明確な戦略がないので、懸案ごとの対応も一貫しない。

米国の序列3位の連邦下院議長とは会わなかった尹大統領が、なぜ中国共産党の序列3位の全人代常務委員長に面会するのかという理由も聞いたことがない。

韓米同盟を踏み台として、自由、市場経済、人権など価値同盟の中心国家に跳躍するという政府の目標に異議を唱える人はあまりない。だが、対外関係では永遠の同盟も、永遠の敵もいない。文在寅(ムンジェイン)政府でよく見てきたように“好意”を先立てた特定国への傾倒が良い結果を生むことはない。それは敵対的な国に対しても同じだ。

平和と繁栄のためにこれらの国に対する適切な管理が必要だ。事の軽重を分けて総合的な国益を判断する外交安保チームの「虎視牛歩」(虎のように睨(にら)んで牛のように歩く)姿勢を期待する。

(ソン・ミンソプ外交安保部長、9月7日付)