【ポイント解説】「国益中心」で右顧左眄する
早くも尹錫悦政府の外交が迷走している。それも無理はない。これまでこの半島に生まれた政府で、周辺の4強大国を相手に外交で成功した事例はごく僅かなのだから。常に緊張と対立をはらむのは地政学的宿命である。
とはいっても、韓国はなんとかその連立方程式を解いて、国を前へ押し進めて行かなければならない。保守政権が誕生して、「特定国への傾倒」で外交をめちゃくちゃにした文在寅政権の教訓から、「価値共有に基づいた戦略的選択」(李相桓韓国外大教授)とか、「強大国に振り回されない原則ある外交」(同)、「国益の観点から原則と方向を立てて実践」(元載淵論説委員)など、この論説面でも多くの提言が出された。
そして、今回の論説は従来の「価値を共有する」民主主義陣営に軸足を置くというよりも、「国益を優先」して「懸案ごとに判断」していくべきだと説いている。国益を優先すれば、経済的つながりがどこよりも太い中国と「戦略的選択」をして行くということもあり得るわけだ。それが、ペロシ米下院議長には会わずに、中国共産党序列3位には会うという尹大統領の「選択的」外交に現れた。つまり尹政権は価値を基礎にした同盟や協力関係よりも、国益を中心にして、時々の判断を行うということが本音だと示したのである。
国益優先それ自体は間違ったことではない。だが、これでは歴史上、朝鮮半島が行ってきた外交と何ら変わりはない。対日関係の改善を呼び掛けるのも、韓国の国益に適(かな)うからであり、インド太平洋経済枠組み(IPEF)や「チップ4」に加わるのも国益故だ。
「虎視牛歩」というより右顧左眄(うこさべん)としか映らない。
(岩崎 哲)



