【韓国紙】「三菱現金化」の判断示さぬ大法院

日韓局長協議のため、外務省を訪れた韓国外務省の李相烈アジア太平洋局長=26日午前、東京・霜が関
日韓局長協議のため、外務省を訪れた韓国外務省の李相烈アジア太平洋局長=26日午前、東京・霜が関

“手続き通りの処理”主張

「判断を先送りしたのでも、外交部意見書の影響を受けたのでもない」

大法院(最高裁)は8月19日、三菱重工業の国内資産現金化の決定を“延期した”と報じられると、このように抗弁した。三菱が特許権の現金化命令を不服として起こした再抗告事件で審理不続行棄却の決定がなされないことで、外交的な波紋を考慮して大法院が意図的に決定を先送りしたとの分析が出てきたことに対する反論だ。

外交部は先月26日、「政府は強制徴用問題の解決策を早期に模索するため、緊密な外交協議を続けている」として、現金化決定を先送りしてほしいという趣旨の意見書を大法院に提出していた。

大法院は納得し難いという立場だ。まず、審理不続行の期限内に決定を下さなければならない義務がないためで、先送りでなく、手続き通りの処理をしたということ。さらに、他の事件をすべて押しのけて、強制動員被害者賠償事件だけ“さっさと”処理できる状況でもなかったと抗弁する。2020年に受理した事件は7万件を超える。

今回の再抗告事件の主審だった金哉衡(キムジェヒョン)判事は9月4日に退任するので、退任前の8月中に結論が出るという見通しが優勢だった。主審として担当した主要事件は退任前に処理するのが通常だ。以前、大法院は三菱が資産差し押さえ命令を不服として出した再抗告を棄却したので、今度の事件の合意にそれほど長い時間はかからないという推測も力を得た。

こうした推定が現実化すれば、政府としては外交的努力が水の泡になってしまう。韓日外交当局は8月26日、東京で局長級協議を開いた。韓日関係改善に関して対話自体を拒否していた昨年と比べると“長足の発展”と言える。しかし日本は現金化開始を韓日関係の“レッドライン”としてきた。大法院の決定によって協議が砂の城のように崩れることもあり得る。

「大法院がもう少し時間を稼ぐ必要がある」とは、外交部の関係者でなく、ある法曹の言葉だ。彼は「以前の政府とは違い、今回の政府は解決意志が見られる」として、「後任の最高裁判事に任せ、事件記録を検討する時間ぐらいさえ与えられれば…」と言葉尻を濁した。高齢の被害者たちを考えれば言い出しにくい言葉だが、“憂国衷情”の苦言と思えたので伝える。

日本政府は8月4日、韓国政府の「(輸出手続きを簡素化できる)ホワイト国」リストへの復帰要求を拒否した。林芳正外相は「現金化に至れば深刻な状況になるので避けなければならない」と繰り返し強調したという。19年の輸出規制措置よりさらに“深刻な状況”が発生し得るという官界の憂慮に耳を傾けざるを得ない。大法院への苦言を伝える理由だ。

(イ・ジアン社会部記者、8月29日付)