【ポイント解説】大法院の判断に注目
「徴用工」裁判に関連して三菱系企業の特許権などの資産売却決定が迫っている。期日は過ぎているのだが、処理する大法院(最高裁)は「通常の」仕事をしているだけで、外交部が出した意見に左右されたり、日韓関係に及ぼす影響を考慮しているものではないと反論する。
文在寅政権では「三権分立」を盾に、政府(行政)が司法に口出しできないとして、日韓関係を決定的に破壊する司法判断に対して、何の手立てもしてこなかった。その置き土産の処理を尹錫悦政権はさせられている格好だ。
そもそも徴用工裁判は「補償」を求めたものではない。植民地時代の日本の「不法行為」に対する「賠償」を問うものだ。「不法行為」には日韓併合条約そのものが「無効」であったという前提がある。だから、もし日本側がこの裁判を認めてしまえば、日本自らが36年間の併合が違法であったと認めることになり、同じような賠償請求裁判がほぼ無限に出てくることになる。
問題の根は1965年の日韓基本条約にある。ここで併合条約は「もはや無効である」とした。日本側は「その時点で無効になっている」と解釈し、韓国側は「最初から無効だった」と解釈して、ともかく国交正常化を急いだ。当時の政治の知恵だった。
だが、韓国の左派勢力は併合時代を認めたくない。臨時政府を立てて日本と戦っていた「交戦国」であり「戦勝国」であるとの地位を得たいのだ。北朝鮮は歴史をそのように捏造(ねつぞう)している。南北対話で「戦勝国」を名乗る側と「植民地だった」側とでは交渉の位置が違う。将来の統一を見据えても、歴史は一致させておきたい。でないと、統一朝鮮として日本側に改めて「賠償」を求めづらいからだ。日本が絶対に譲れない理由である。ある意味、日韓関係を決定的に壊す判断を韓国大法院は迫られている。
(岩崎 哲)



