オール沖縄、事実上壊滅状態に
翁長雄治氏、知念覚氏=16日、沖縄県那覇市.jpg)
任期満了に伴う那覇市長選挙(16日告示)が23日に投開票される。無所属新人で玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力の前県議の翁長雄治(たけはる)氏(35)=立民、共産、れいわ、社民、沖縄社会大衆推薦=と、同じく無所属新人で政権与党が推す前那覇市副市長の知念覚氏(59)=自民、公明推薦=の一騎打ちとなる。今期で退任する城間幹子市長が知念氏の支持を表明し、選挙戦に少なからず影響を及ぼすとみられている。(沖縄支局・豊田剛、写真も)
翁長陣営は「離反」と支援撤回を求める
選挙イヤーを締めくくるのは那覇市長選挙だ。玉城氏が再選した天王山の知事選(9月)に続き、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対でまとまってきた政治勢力「オール沖縄」と自公の対決構図となった。

しかし、玉城知事を支えてきたオール沖縄陣営の重鎮だった城間氏が知念氏の支持を表明したため、オール沖縄は揺らいでいる。
城間氏は、故翁長雄志氏が2014年にオール沖縄を立ち上げて知事選に出馬した際、後継として市長選に立候補。2期8年にわたってオール沖縄に支援されたが、引退に当たり後継指名は避けてきた。
一方、知念氏は、雄志氏が自公に支えられていた14年間の市長時代に秘書広報課長など要職を歴任。久高友弘市議会議長によると「雄志氏の信頼が厚かった人物」だ。城間市政では副市長を8年近く務め、城間氏の絶大な信頼を得ていた。こうしたことから、自民とオール沖縄の両陣営ともに知念氏を後継候補として白羽の矢を立てた。
知念氏が自民の要請を受け入れて出馬を決めると、オール沖縄陣営は、翁長氏の擁立に踏み切った。2人の市長に仕えた側近よりも雄志氏の息子の方が支持が得やすいと判断したのだ。
知念氏支援を決めた理由について城間氏は、「2期8年間、ともに市政運営をしてきて、それだけの信頼感がある」と述べた上で、「私自身はスタート時点から保守中道で真ん中。変節ということはない」と強調。「雄志さんがオール沖縄を形成して出発したあの時に戻りたい」とも述べ、共産党など革新勢力主導のオール沖縄の現状を暗に批判した。
翁長陣営にとって、城間氏の行為は「離反」に映り、大きな痛手だ。市議会の与党会派は11日、陣営の選対本部長就任を城間市長に打診したばかりだった。陣営幹部は「雄治氏を後継だと前面に出して戦う準備をしていた」と嘆き、「亡き父・雄志氏や城間氏を支持してきた市民への裏切り行為だ」と批判。12日には知念氏の支援撤回を求めた。
雄志知事時代に副知事として支えてきた安慶田光男、浦崎唯昭両氏、城間市政で副知事を務めた久高将光氏も知念選対の要職を務めている。オール沖縄発足当時の保守中道のメンバーは今、ほとんど残っていない。さらに、知念陣営は知事選に立候補した下地幹郎氏の後援会や参政党の支援も取り付けた。
那覇市長選挙は、新型コロナ禍で打撃を受けた経済・観光の振興、子育てや教育、福祉政策などが争点となる。ただ、経済や福祉をめぐっては大きな違いはない。翁長氏の陣営が強調するのは、那覇市政とは直接関係のない基地問題。すなわち、普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対だ。
翁長氏は16日夕、県庁前で開いた出陣式で、「政府にノーと言うべきものはノーと突き付ける。皆さんの声を必ず形にする」と訴えた。雄志氏の知事選に選挙スタッフとして関わったことがきっかけで政治の道に進んだが、那覇市議、沖縄県議ともに1期目の途中で辞任。議員として目立つ実績のないのが懸念材料だ。さらに、自身のセクハラ発言で厳しい立場にある。
こうした中、頼みの綱は玉城知事だ。「選対本部長の私からのお願いです。オール沖縄を守るため皆さんのお力が必要です」。玉城知事は16日、ツイッターにこう投稿し、危機感を募らせた。
しかし、こうした発言がさらなる反発を招く結果になっている。自民党県連のある幹部は、「『誰一人取り残さない』という知事が、オール沖縄の組織を守ることにしか関心がないことが明確になった」と批判した。
それでも、知念氏はチャレンジャーの立場にある。選挙への挑戦は初めてで、知名度不足が最大の課題だ。金城泰邦衆院議員(公明)は16日の出陣式で、「3代続く政治家一家の翁長氏と違って地盤も看板(肩書)もカバン(資金力)もない。岩盤層を崩すのは簡単ではない」と危機感を募らせた。3期ぶりの保守系市長が誕生すれば、玉城知事の県政運営はさらに厳しさを増す。
那覇市選挙管理委員会によると、10月15日現在の選挙人名簿登録者数は25万764人。
また、市長選と同じ日に那覇市議補選(欠員1)も実施され、届け出順に、いずれも無所属の上地健司氏(42)、川満昇治氏(57)、永山盛太郎氏(58)、「官と民が命がけで助け合えば貧困はなくせます党」の屋(おく)辰夫氏(70)の4人が立候補しており、中道保守系の川満氏とオール沖縄系の永山氏の事実上の一騎打ちとなっている。



