辺野古移設公約は三者三様
、佐喜真淳氏、下地幹郎氏=17日、沖縄県那覇市の琉球新報ホール.jpg)
任期満了に伴う沖縄県知事選は25日に告示され、9月11日に投開票される。出馬を予定している主な候補者は、現職の玉城デニー氏(62)と、いずれも新人で前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)、前衆院議員の下地幹郎氏(61)。大きな争点の一つである、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設についての三者の公約・主張をまとめた。(沖縄支局・豊田 剛、写真も)
新基地は造らせない 玉城氏
30年までに普天間返還 佐喜真氏
普天間は軍民共用化を 下地氏
普天間飛行場の移設計画で、政府が代替施設の建設先である名護市辺野古沿岸部への土砂投入を始めて3年8カ月が経過した。前回の知事選で「辺野古に『新基地』は造らせない」「埋め立てを認めない」ことを公約に掲げて玉城デニー知事が就任してわずか3カ月後のことだった。
日米両政府が合意した移設計画は、米軍キャンプ・シュワブがある辺野古沿岸部の北側約111㌶と南側約39㌶を埋め立て、V字形の滑走路を造る。南側の陸地化は完了しており、全体の約3割はすでに埋め立てられている。ただ、北側は軟弱地盤の土地改良が必要で、完成時期は日米両政府が当初合意した「2022年度またはその後」から、30年代へと大幅にずれ込んだ。

2期目を目指す玉城氏は前回同様、「オール沖縄」勢力から支援を受ける。前回は、任期中に亡くなった翁長雄志氏の後継者選びの意味合いが強い選挙で、辺野古移設に強く反対した玉城氏が大差をつけて佐喜真氏を破った。
玉城氏は20日、名護市で行われた決起大会では「辺野古に新基地はいらない。50年、100年先の子供たちに基地負担を押し付けることはやめさせよう」と訴えた。
埋め立て工事に時間を要していることについて、「基地の大半、7割を占める大浦湾側(北側)の軟弱地盤の存在については非常に難工事であり、普天間をそこに移すのではなく県外国外への移設を考えるべきである」と主張する。
17日の政策発表で「辺野古は難しい工事が予想されることなど、日本政府からもたらされなかった事実がいくつも明らかになっている。あらゆる手立てを講じることで、新基地建設を止めることは可能であると断言する」と語気を強めた。
これに真っ向から対抗するのは、政府与党が推す佐喜真氏だ。辺野古移設を条件に30年までの普天間飛行場返還を公約に掲げる。7月の参院選で自民公認の古謝玄太候補が辺野古移設容認を公約として戦ったのに次いで、移設容認の立場を鮮明にする。
14日、日本青年会議所(JC)沖縄協議会主催の討論会で「一日も早い返還を政府に突き付けて、沖縄側の思いとして公約である2030年までの返還を実現させる交渉をする」と述べた。それまでの間は、県外への訓練移転で危険性除去を進めるとした。30年に工期短縮させることについては、「これが私の信念であり、私でなければできないと思っている」とし、日米両政府と粘り強い交渉をして実現すると決意を述べた。
辺野古移設に反対し、裁判を繰り返す玉城県政の対応については「玉城知事は危険性の除去を放置しているといっても過言ではない」と批判。「しっかり現実を見据え、一刻も早く返還を実現できることを模索する」と強調した。
下地氏は、両者と違ったスタンスで臨む。これまで埋め立てられた南側については容認する一方、軟弱地盤が見つかった北側の埋め立ては認めない立場だ。埋め立て工事を止められない玉城県政を「公約を守れない」と強烈に批判する。
普天間飛行場の危険性除去のためには、自衛隊基地の建設計画が進められている馬毛島(鹿児島県西之表市)への訓練移転を主張する。自衛隊基地整備計画のある馬毛島を「2019年に国が買い取って、そして今工事が進んでいるという根拠をつくっていた」と主張。防災などの観点から、訓練移転後は同飛行場の軍民共用化を進める考えを示した。
辺野古埋立地の南側はオスプレイの移駐先としての活用を提言。「そうすることで、普天間基地の訓練はなくなるし、オスプレイはいなくなる」と指摘。 JC討論会では「とにかく普天間基地の辺野古移設の問題を終わらせる、対立を無くす。県民がもう二度とこの問題でこの争いが起こらないような最後の知事選挙にするというのが私の考え」と持論を述べた。さらに、伊丹空港周囲3㌔㍍にある小中高校の数は普天間飛行場周辺よりも多いことを指摘した上で、「訓練移転をすれば普通の飛行場になるし、そうなれば危険性の除去は完全にできたことになる」と主張した。



