政治部長 武田 滋樹
今の政界は旧統一教会(世界平和統一家庭連合、略称・家庭連合)問題で揺れている。
岸田文雄首相は内閣改造と自民党役員人事を8月10日に早めて断行したが、前日に「旧統一教会との関係を…自ら点検し厳正に見直してもらうこと」が人事の「前提となる」と表明し、改造人事の一つの目的が旧統一教会との関係見直しであることを明らかにした。
そのため、マスコミの関心が新政務三役(閣僚、副大臣、政務官)や党役員と旧統一教会およびその関連団体との議員個人との関係に集中し、18日には立憲民主党など野党が閣僚らと旧統一教会の関係などを追及するため月内の臨時国会召集を要求。19日になってもNHKが「政務三役73人について、…少なくとも32人が関連団体に会費を支出するなど、何らかの接点があった」と報じるまでになった。
なぜ、このような事態を招いたのか。議員個人に関係見直しを求める岸田首相の方針に不備はなかったか。
一口に旧統一教会との関係といっても、その指摘された大部分は家庭連合ではなく、その「関連団体」との関係だ。だが、関連が指摘された各種団体は、それぞれに掲げるビジョンや目的があって、独自の組織体制を確立して活動している。
「統一教会は100%悪」とする全国霊感商法対策弁護士連絡会に属する弁護士に何事もお伺いを立てるテレビ番組やマスコミ報道が幅を利かす現状からすれば、家庭連合との関係を問題視することは理解できなくもないが、違法な活動が具体的に示されていない関連団体と議員との関係がなぜ問題となるのか。
「創設者」が家庭連合の総裁であったり、信徒が中心的に運営している点を挙げて、フロント組織(偽装団体)とする向きもあるが、家庭連合自体が公然の団体であり、憲法に信教の自由、結社の自由が定められている以上、信徒が団体を運営しても何ら問題はない。ましてや、議員などがその団体と合法的な関係を持つことは問題になり得ない。
残るのは、関連団体が政治家と関係を持ったり、社会的なステータスを得ることが家庭連合を庇護(ひご)・支援することになるという弁護士たちの主張だ。しかし、これこそ団体の目的を勝手に規定して悪と決め付ける、「稀代(きたい)の悪法」と言われた治安維持法ばりの発想であり、憲法が保証する結社の自由、思想信条の自由を無視するとんでもない主張だ。
中曽根康弘元首相は1987年7月の臨時国会で共産党議員が「霊感商法の背後に、統一協会、勝共連合があることは明白」としながら、「自民党総裁として、今後、勝共連合ときっぱり手を切るか」と質問したのに対し、いわゆる霊感商法問題には「悪質な商法については、従来から被害の未然防止措置や取り締まりを積極的に行っている」とする一方、「一部団体と、自民党は縁を切れとか言っておられますが、これは思想と行動の自由に対する重大なる侵犯発言」だと一蹴した。
このように被害防止と思想・行動の自由に関わる問題を明確に区別する冷静な対応が、今こそ必要だ。



