
「戦争」と明確に主張
ロシアのプーチン大統領が昨年2月24日、ウクライナ軍事侵攻を命令した時、世界はロシアが侵略者(加害者)であり、ウクライナはその軍事行動の犠牲国だと素早く判断した。その立場は戦争が1年3カ月目に入った現在まで揺るぎがない。一方、加害者国のロシアの最高指導者プーチン大統領は9日、モスクワの赤の広場で開かれた第78回対独戦勝記念日の演説で、「わが国は犠牲国だ。西側がわが国を脅かしたからだ。国民は結束して祖国を守らなければならない」と檄(げき)を飛ばした。プーチン氏の加害者と犠牲者の区別は世界のそれとは百八十度違うことが改めて確認された。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が3月3日、インドの首都ニューデリーで開催された国際会議で「わが国は戦争を止めようとしている」「(ウクライナ)戦争はウクライナの攻撃で始まった」と語った時、会場から笑いが漏れた。
しかし、プーチン大統領の発言を聞いて、笑い出した人は流石(さすが)にいなかっただろう。ラブロフ外相の嘘(うそ)発言をプーチン氏の発言とは比較できない。オーストリア国営放送(ORF)のモスクワ特派員パウル・クリサイ氏は9日、「プーチン氏はまったく別世界の住人のようだ」と評し、「ロシアのプロパガンダ工作にすぎない」といって看過できる段階を超えて、不気味さと怖さを感じているのだ。同特派員は「プーチン氏のパラレルワールド(並行世界)」と呼んでいた。
プーチン氏は「文明は今日、再び重要な転換点にある。私たちの祖国に対して本当の戦争が始まった」と述べ、もはや「特殊軍事作戦」とは表現せず「戦争」とはっきりと主張し、「西側のエリートは憎しみとロシア恐怖症の種をまき散らし、私たちの国を破壊しようとしているが、私たちは国際的なテロリズムに反撃し、ドンバスの住民を保護し、安全を確保している」と豪語した。



