展望欠いた親軍政党
大ざっぱに言えば間違いではないが、「コロナ禍による経済低迷」というのは言葉足らずだろう。とりわけバンコク中間層の親軍政権への経済政策面での失望は、未来への展望を欠いた親軍政党の見識不足だ。
一番いい例が、電気自動車政策だ。プラユット政権は、電気自動車が21世紀の大きなマーケットになるとは思っておらず関税をゼロにした。せいぜいゴルフ場のカートぐらいだろうと高をくくったのだ。
そのせいで今、タイ市場には無関税で中国製電気自動車がなだれ込むようになっており、タイ製電気自動車の開発や生産の芽を摘んでいる。これでは東南アジア最大の自動車生産大国であるタイの将来が危うい。こうした危機感が親軍政権にNOを突き付けた経済的理由の一つだ。
なお、両社説が言及しなかったテーマに、クーデター再来の懸念がある。7月下旬とされる首相指名選挙に照準を合わせ、これから各党の交渉が始まるが、この組み合わせでもたついて政治的空転が始まるようなら軍が伝家の宝刀を抜く可能性はある。
(池永達夫)



