「同性カップル2世」問題を避け浅薄に終わったNHK「同性婚」討論

男女の夫婦のイメージ(Photo by Khamkéo Vilaysing on Unsplash)
男女の夫婦のイメージ(Photo by Khamkéo Vilaysing on Unsplash)

無理がある解釈主義

憲法解釈において価値観が絡む問題では、原意を解釈の拠り所とすべきだとする考え方がある。「原意主義(オリジナリズム)」だ。これに対して、原意に固執することなく、時代の変化に沿って創造的に解釈する「解釈主義」がある。

「憲法記念日」を前にした4月30日、NHKが与野党の幹部をスタジオに招き「憲法記念日特集、G7広島サミット“国際社会”と日本」と題する討論番組を放送した。論じるテーマの一つに「同性婚」があった。憲法との絡みで深い議論になるかと思って見ていたが、表面をなぞるだけの浅薄な議論で終わり、LGBT(性的少数者)思想啓蒙(けいもう)の一環で、NHKが意図的に同性婚を選んだ感が否めなかった。

憲法24条1項に「婚姻は、両性の合意のみに基づいて」との文言がある。明示的には同性婚を禁止も容認もしていない。この現行憲法の下で、同性婚の法制化が可能なのか、とNHKは問い掛けたのである。衆議院憲法審査会与党筆頭幹事・新藤義孝(自民党)は24条は「異性婚であって、同性婚は想定していない。これが学説です」と言う。

現行憲法が想定していない同性婚の法制化を実現するためには憲法改正が必要との立場だ。憲法の草案過程にあった77年前の当時、結婚は異性婚が自明の理。将来、NHKが同性婚を後押しするようになるとは思いも及ばず、同性婚禁止を明示する必要はなかったのである。

一方、今年3月、同性婚実現のため「婚姻平等法案」を衆議院に提出した立憲民主党の憲法調査会長、中川正春は「『両性の合意』を“2人の同意に基づいて”と(解釈を)変えていく考え方もある」とした。こちらは解釈主義だ。

だが、司会者も出演者の誰も、24条1項に「夫婦」の文言が入っていることには言及しない。「岩波国語辞典」には、夫婦は「夫と妻。結婚している一組の男女」とある。これを解釈主義に立って「夫夫」「婦婦」に読み替えることには無理がある。原意主義に立たなくとも、「両性の合意」に「夫婦」の文言を含めて考えると、現行憲法下で同性婚は可能とするのは曲解にしか思えない。