中国がパレスチナ和平に名乗り、実現の難しさ伝えるディプロマット誌

力関係非対称な両者

だが、ブリュッセル・スクール・オブ・ガバナンス(BSoG)のガイ・バートン非常勤教授はその効果について慎重だ。

ディプロマットでバートン氏は、「イラン・サウジ交渉と同様、中国のイスラエル・パレスチナ仲介の提案も大げさに捉えるべきでない」と主張している。

まず、両者の力関係が「非対称」であり、経済的、軍事的にイスラエルが圧倒的に強い。さらに、イスラエルによるパレスチナへの「強固な支配」が、1993年のオスロ合意でうたわれた「最終的な和平」を困難にしていると指摘する。

また、「イスラエルの強さとパレスチナの弱さのため、後者は紛争の『国際化』を望み、イスラエルに対抗する手段として外部のアクターを取り込もうとする」一方で、「イスラエルは、米国が主要な仲介者である現状からの変化を望んでいない」と中国を仲介者とする交渉の難しさを指摘する。

イスラエルの同盟国である米国が、イスラエルに甘い一方で、中国はこれまで政治、外交でパレスチナ寄りの姿勢を取ってきた。

経済関係悪化望まず

ところが、経済となると様相は異なる。「中国とイスラエルの経済的な関係は、この10年で大きく成長した」(バートン氏)。貿易額はほぼ2倍になり、この10年間の中国からの投資は100億㌦を超えている。交渉再開へイスラエルに圧力をかけ、「これらを危険にさらすことは中国は望まない」だろうとバートン氏は指摘する。

中東で和平が進むことは歓迎だが、現状を見る限り望みは薄い。バートン氏も「まずは様子見」と静観の構えだ。
(本田隆文)