
警戒強める欧米各国
外交の舞台での米国の退潮が目立つ中、中国が攻勢を強めている。ウクライナ、サウジアラビア・イランに続いて、イスラエル・パレスチナ和平に乗り出そうと仲介を申し出た。
中国は2月、ロシアが侵攻し戦闘が続くウクライナを巡って停戦案を提示、中東でも3月にサウジとイランの外交関係復活の合意を取り付け、世界を驚かせた。
ウクライナ停戦案はロシア寄りで、国際社会からは実効性はあまりないとみられている。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は条件付きながらも関心を示している。戦線が膠着(こうちゃく)する中、わらにもすがる思いなのだろう。
一方のサウジ・イランの関係修復は、米国が近年、影響力を弱める中東への中国の進出を示すもので欧米各国は警戒を強めている。
オンライン誌ディプロマットは、サウジ・イラン合意について「両者が互いを傷つけないことを保証するメカニズムはなく、保証人としての中国の明確な約束もなく、『弱過ぎる』との批判が出ている」とした上で、両国の代理戦争の舞台になっていた「イエメンでの停戦につながった」と評価している。このままイエメンの内戦が収束に向かえば、国際社会としては、中国の外交実績として評価せざるを得なくなることは間違いない。
4月17日、中国の秦剛国務委員兼外相が、イスラエルのコーエン外相、パレスチナ自治政府のマリキ外相と個別に電話会談を行い、和平交渉再開への仲介を申し出たことが報じられた。
英紙ガーディアンによると、秦氏は双方に「和平交渉再開へのステップ」を促し、「便宜を図る用意がある」ことを伝えたという。
また、「サウジとイランは対話を通じて、外交関係を復活させた。対話によって違いを乗り越えるいい前例となった」と述べ、サウジ・イラン仲介をてこにパレスチナ和平に関与することへの意欲を示したという。パレスチナは2匹目のドジョウということだ。
イスラエル・パレスチナ関係は、昨年、イスラエルにネタニヤフ首相率いる右派政権が発足した後、一気に悪化、緊張が高まっている。和平交渉は2014年以来止まったままで、米国からも仲介への意欲は見られず、鎮静化の兆しは今のところ見えない。
ここで、仲裁が功を奏し、事態の沈静化、和平交渉再開につながれば、中国の国際的な威信がいっそう高まることは間違いないだろう。



