社会の高齢化に伴い増加する高齢者への差別問題を特集した独誌

趣味を楽しむ高齢者のイメージ(Photo by Vlad Sargu on Unsplash)
趣味を楽しむ高齢者のイメージ(Photo by Vlad Sargu on Unsplash)

2人に1人偏見持つ

ドイツの代表的週刊誌「シュピーゲル」(3月25日号)は社会の高齢化とそれに伴う高齢者への差別について8ページにわたり著名な高齢者のコメントや社会各層の意見を特集している。特集のタイトルは「突然、年を取り過ぎた?」だ。換言すれば、「エイジズム」だ。

ジュネーブに本部を置く世界保健機関(WHO)は2021年、エイジズムへの戦いキャンペーンで「Age doesn’t define you(年齢であなたを定義できない)」というキャッチフレーズを掲げていた。エイジズムとは年齢による差別や偏見を意味するもので、「年齢主義」ともいわれる。

WHOの調査によると、世界的に2人に1人の成人は高齢者に対して偏見を持っているという結果が出ている。年齢問題研究者で心理学者のクラウス・ロータームンド氏は、「高齢者に残りの人生への期待を少なくするように要求することは非人間的だ。年を取ればそれだけ価値がなくなるとほのめかしているようなものだ」と指摘している。

英国では社会保障制度の充実を「ゆりかごから墓場まで」というスローガンで表現された時代があったが、人は自分も年を取って高齢者になるとは考えない。「今日の高齢者」を批判している人は「明日はわが身だ」という認識が乏しい。社会自体に、年を取ることを伝染病と考え、それを回避しようとする傾向が強まってきているという。

シュピーゲル誌は高齢者への差別、偏見等を社会の各層から聞き出している。銀行は高齢者にはクレジットカードを発給しない。住居探しも若い世代と比べ難しい。自動車の事故保険でも高齢者の場合、事故が多く発生しやすいという理由から保険料は高くなる。実際は高齢者の事故発生率は他の世代より高いという数字はない。鬱(うつ)などの精神的病になった場合も、高齢者は「当然の現象」と受け取られ、真摯(しんし)に対応してくれなくなる。