「失われた10年」前面に

立憲民主 党大会報告

強い野党の不在も検証を

立憲民主党は2月19日、党大会を開催し、党機関紙「立憲民主」(3・17)の8面でその様子を報告した。泉健太代表はあいさつの中で「失われた10年」という言葉を何度も使い、「われわれこそがそれを取り戻さなければならない」と訴えた。同じ面に掲載された逢坂誠二代表代行による「あとがき」にも、安倍内閣から岸田内閣までの10年間について「日本の民主主義の基盤が大きく損なわれています。まさに『失われた10年』なのです」と書かれている。

「失われた10年」が立民のスローガンになったのは2月1日に、「失われた10年政策検証プロジェクトチーム」(PT)を立ち上げ、自民党が2012年に政権復帰して以降の政策を検証すると発表してからだ。検証テーマは、少子化対策、選択的夫婦別姓制度、LGBT、農家の戸別所得補償制度、地方分権、社会保障、原発・エネルギー政策の6分野。安住敦国対委員長は会合で「反転攻勢のときだ。私たちのやってきたことは決して間違いではなかったと各委員会で証明していきたい」と意気込んだ。

PT立ち上げのきっかけは、自民党の茂木敏充幹事長が1月25日の衆院代表質問で、児童手当の所得制限撤廃を提起したことだ。自民党は野党時代、旧民主党政権の看板政策だった「子ども手当」に反対しており、財政的余裕がないことを理由に所得制限を設けるべきだとの立場にも立っていた。当時と百八十度違う主張であり、波紋が広がるのは当然だろう。

とはいえ、PTの立ち上げは2月1日、国対ヒアリングも立民のホームページを見る限り同月14日の第6回以降は開催報告がない。ひっそりと路線変更したのかと思われたが、統一地方選でも「失われた10年」はスローガンとして健在だ。泉氏らの応援演説や候補者のビラなどにも散見される。

政策の検証は必要な作業だが、検証の目的がかつての自分たちの正当性を主張することにあっては意味がない。それよりも、かつて政権を担当した政党が離合集散を繰り返し下野してから10年経(た)っても政権を狙える位置にいないことの方が問題だ。強い野党の不在は日本政治にとっての不幸でもある。10年間を検証するなら、その間の野党の動きについての分析もお願いしたい。

(亀井 玲那)