植田日銀への注文で大規模緩和の副作用指摘も修正を是としない日経

苦境に無頓着な日経

日経は昨年、黒田日銀が金融政策決定会合で大規模緩和を決めるたび米国との金利差拡大から円安が進行した際も、円安是正には触れず、日銀の政策決定にもほとんど言及しなかった。それどころか、円安の利点や円安を生かすような工夫を説いた。小欄でもたびたび指摘し怪訝(けげん)に思ったが、これで合点がいった。

日経は今回の社説で、各紙と同様、金融政策の副作用には言及し、「次第に硬直的な政策運営がみられ、金融緩和の副作用が目立つようになったことも事実だ」と指摘する。

長期金利を低く抑える政策の枠組みの下で、金利上昇圧力を受けた日銀は大量の国債購入を強いられた。金利形成をゆがめ、企業の社債発行をかく乱した。22年12月の抜き打ち的な政策修正を含め、市場との対話に課題を残した――。

日経はこのように副作用を挙げ、「植田新総裁はこうした教訓を踏まえ、政策運営の枠組みや情報発信のあり方を総点検してほしい」という。そして、見出しにある「柔軟な政策運営と明快な対外説明」を求めるのだが、この「柔軟な政策運営」の中身は何なのか具体的な説明がない。

また、「異次元緩和をすぐにはやめられないからこそ、副作用の軽減や丁寧な対話が問われる」とも指摘するが、「副作用の軽減」が意味するのは、結局のところ、大規模緩和の修正ではないのか。

最近は欧米の利上げによる海外景気の減速で、日銀の緩和継続決定でも過度な円安は見られなくなったが、昨年半ばまでの過度な円安は日銀の金融政策で拍車が掛かった面も大きかった。今も食品をはじめとした値上げが相次ぎ、過度な円安の影響をいまだに拭えないでいる。結果的に日経は、こうした物価高の苦境に無頓着だったと言える。