中国がぶら下げたニンジンの赤い野心が見抜けない毎日、日経

中国の秦剛国務委員兼外相(右)と握手する 林芳正外相=2日、北京の釣魚台迎賓館(代表撮影・時事)

間違った認識を露呈

3年3カ月ぶりの外相訪中となった。林芳正外相は、北京で秦剛外相や李強首相と会談。各紙は一斉に社説で論じたが、中国認識がいびつで大局観に欠けるものが目立った。

4日付け毎日社説「3年ぶりの外相訪中 懸案あるからこそ対話を」では、「互いに主要な貿易相手国であり、地域の安定を必要とする。3月に就任した李強首相が林氏と面会したのは、習近平指導部の対日関係重視の表れと言える」と書き出しから間違った中国認識を露呈させている。

日中は相互に主要貿易相手国ではあるものの、中国は鄧小平の「改革路線」以後、敷いてきた経済優先から政治優先へと舵(かじ)を切っている。政治優先の意味は、突き詰めて言えば共産党独裁政権の維持だ。その政治目的のためには、地域の安定は二の次になる。

3月に中国が「反スパイ法」違反容疑で日本人会社員を北京で拘束したのも、林外相訪中のさなか、中国公船が沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入したのも、政治目的優先の結果として出てきた暴挙だ。

そうした中国に対し、ただ対話を続けるだけでは相手側の時間稼ぎに使われるだけ。その意味で対中外交で問われているのは、毎日の言う「懸念あるからこそ対話を」ではなく、「懸念解決できる政治的バーゲニングパワーを」だろう。