米利上げ 他紙が「慎重」求める中、総合判断で「妥当」の日経に一日の長

止めれば臆測広げる

読売などの3紙に利上げへの評価がなかった点については、難しさがあったのも確かである。各紙が指摘するように、信用不安表面化のきっかけとなったSVBの破綻は、FRBの急速な利上げが一因だったからである。

金利が上がると米国債など債券価格は下落する関係にあり、銀行が保有する債券に多くの含み損が生じる。それが信用不安につながり、預金の流出が加速。またFRBには銀行を監督する責任もあり、「今回の相次ぐ銀行破綻を回避できなかった」(読売など)。

パウエル議長は記者会見で、利上げの見送りを検討したことも明らかにしたが、根強いインフレと労働需給の逼迫(ひっぱく)が続いていることから「(インフレ抑制に取り組む)FRBの信頼を行動によって維持することが重要だ」と利上げの理由を説明した。

読売は「ただ、景気にマイナスの影響を及ぼす利上げは、金融不安に拍車をかける恐れもある」として、FRBに対し「細心の注意を払い、政策を運営しなければならない」と説くだけで、利上げへの判断はしなかったのである。

毎日、朝日もほぼ同様で、「各国の金融当局には、柔軟で機動的な政策運営が求められる」(毎日)とした。毎日はさらに、利上げを停止すれば、物価高騰と景気悪化が同時に進行する「スタグフレーション」のリスクが高まるとして、「経済や金融機関の経営に与える影響を見極め、慎重に政策決定することが重要だ」とも。

一方、今回の利上げを「総合判断すれば妥当だろう」とした日経。同紙の判断の理由は、やはり、「しつこいインフレや米雇用の強さ」である。そして、その背景として、「利上げを続ければ銀行経営を圧迫しうる一方、止めれば金融不安は深刻との臆測を広げかねず、FRBは難しい判断を迫られた」という事情を挙げた。妥当な指摘であろう。