中東の地政学的「ゲームチェンジャー」と成り得るサウジ・イラン合意

軍事力から経済力へ

リッター氏は、「これらの紛争は、米国とイランの関係悪化の文脈の中で表れた」と指摘。中国が仲介するサウジ・イラン合意はこのカオスの弧を「安定の弧」に変えることを意味すると訴える。「軍事力ではなく、経済力が中東情勢を決定付ける新時代」だ。

サウジの支援を受けるレバノンの「政治・経済エリート」と、イランの支援を受け、レバノンで政治的、軍事的に巨大な力を持つヒズボラとの和解、サウジの資金がシリアの再建に投入される可能性も開かれ、イエメンの内戦も終結へと向かう可能性が出てくる。

米国も、中東安定に取り組んできた。2020年の「アブラハム合意」だ。この合意によって、UAE、バーレーンの湾岸諸国と北アフリカのモロッコがイスラエルと正常化した。だが、これは「反イラン連合を拡大、強化」するためのものであり、サウジ・イラン合意とは真っ向から対立する。

トランプ前米大統領自身が語っていたように、アブラハム合意にサウジも加わる可能性も指摘されていた。サウジこそアブラハム合意、反イラン連合の本丸と言うべきだったはずだが、サウジ・イラン合意で、米国を介したこれらの取り組みは後退せざるを得ないだろう。