「夢」実現目指す中国
米国ドルが国際基軸通貨になっている大きな理由は、石油の売買取引がドル建てになっているからだ。中国の習近平国家主席は昨年末、サウジなどアラブ主要産油国で構成する湾岸協力会議(GCC)指導者らと会談した際、石油・ガス貿易の人民元建て決済を推進する姿勢を表明した。
2049年の建国100周年までに「中国の夢」を実現しようと100年マラソンを走っている中国にとって、覇権国家米国の追い落としこそ21世紀前半の最大の課題だ。
基軸通貨ドルの影響力を低下させ、一帯一路でユーラシア大陸の東西を陸路と海路で結び巨大経済圏構築を図ろうとしている中国の最終目標は、米国を覇権国家から引きずり下ろし、その座に中国が座ることだ。
サウジ、イランを訪問した習近平氏の当初の目的も、一帯一路の要衝を押さえるためだった。そうした中国の本音を見ようとせず、観念的空想の世界に浸っているようでは到底、国際社会の荒波を渡り切ることはできない。
中国外交の限界示唆
この点、日経の12日付社説「サウジ・イラン正常化は安定をもたらすか」は的確だ。
日経は「今回の正常化を仲介したのが中東に影響力を行使してきた米国でなく、中国だった点が重要だ。中国主導の下で実現した和解が地域に安定をもたらすのか、注意深く見る必要がある」と前置きした上で、「懸念されるのは中国を介したサウジとイランの接近が、ウクライナ危機をきっかけに鮮明になった世界の分断を広げることだ」と視野をぐっと広げ俯瞰(ふかん)する。
さらに「自由や民主主義、人権といった共通の価値観を持つ日欧米からみれば、ロシアや中国、イラン、サウジなどの国々に問題があるのは否めない。非西側陣営が結束を強めれば亀裂は深まる。イラン核問題の解決も遠のきかねない」と内政に干渉せず丸呑(の)みする中国型外交の限界を示唆する。
(池永達夫)



