ローカル線再編「自由民主」解説

地方創生の観点が必要

地方路線のイメージ(photoAC)

交通機関が移住の判断要素

自民党機関誌「自由民主」(2・28)の1面は、「持続可能な交通網へ再構築」の見出しで、利用者が少なく赤字が続くローカル線の再編について取り上げた。

政府は10日、この問題に対する国の関与を強めることで、沿線自治体と鉄道事業者との再編協議を進めるため、地域公共交通活性化再生法などの改正案を閣議決定。14日には衆院本会議で審議入りした。「自由民主」では法案の具体的な内容を解説している。

改正法案には、国土交通相が必要と認める場合に「再構築協議会」を設置できると明記されている。「自由民主」によると、協議会の設置によって、国が中立の立場で「自治体と鉄道事業者を仲介し、路線の『廃止ありき』『存続ありき』の前提を置かない議論を進める」狙いがある。

民間企業である地方鉄道やJRなどにとって赤字路線の維持が困難である一方、沿線自治体は「廃線を望まない場合がほとんど」だという。例えば、岡山・広島両県間を走るJR芸備線について、JR西日本は「特定の前提を置かずに議論を開始したい」と持ち掛けたが、自治体側は「利用促進以外は議論しない」として協議を拒否した。法改正によって、このように双方の合意が得られず協議に進めないケースへの介入も可能になる。

ローカル線を再編するに当たって、国が関与を強めるというのなら、単なる利害調整者になるのではなく、地方創生の観点を強く持って臨んでほしい。

岸田文雄首相の推進するデジタル田園都市国家構想では、東京一極集中を是正するため、デジタルを活用した「転職なき移住」を推進している。コロナ禍でテレワークなど多様な働き方が広まったのをきっかけに、移住を考える人が増加傾向にあり、移住希望者を支援するNPO法人「ふるさと回帰支援センター」によると、昨年の移住相談件数は前年比5・7%増で過去最多となったという。

移住先を選ぶ際に公共交通機関が充実しているかどうかは判断要素の一つになる。地方では自家用車での移動が一般的であることが多いが、子供がいる家庭の場合、通学などに使える公共交通機関があるかは重要だろう。

再構築協議会の役割として、利用促進策や代替交通手段など具体策を示すことも挙げられている。必ずしも鉄道という形に固執する必要はないが、路線の維持という次元ではなく地方創生に資するような落としどころを求めたい。

(亀井玲那)