共産党の迷走論じる「公明」

矛盾にぶち当たる「活用論」

参議院選挙で第一声をあげる、日本共産党志位和夫委員長=6月22日東京都、新宿駅前で
参議院選挙で第一声をあげる、日本共産党志位和夫委員長=2022年6月22日東京都、新宿駅前で

公選制主張の党員また除名

公明党の月刊機関誌「公明」3月号と4月号は、「迷走する日本共産党の自衛隊政策」と題し共産党の自衛隊に関する主張の変遷について上下に分けて取り上げた。今までの党綱領や共産党機関紙「赤旗」の過去記事、元共産党員らの著作などから、共産党の自衛隊に対する認識、また主張の変遷から窺(うかが)える同党の体質について論じている。

共産党はもともと、自衛隊や警察、在日米軍を「暴力装置」と認識し、日米安全保障条約や自衛隊は社会主義革命を成就するに当たっていずれ廃棄・解散させるものと考えてきた。しかし昨年4月7日、志位和夫委員長は参院選を控えた党の会合で「急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と主権を守り抜く」と発言。自衛隊を違憲とし、かつ護憲派を自負してきた従来の立場との矛盾にぶち当たるのは明らかで、「ご都合主義」などと波紋を呼んだ。

志位氏は批判を受けて、自衛隊の「活用」は「2000年の党大会で決め、04年の綱領に明記した方針」と反論したが、これは誤りである。確かに党大会の決議にはそういった内容が盛り込まれたが、綱領にはどこにも明記されなかった。「公明」は一連の流れを取り上げて、「すり替え、ごまかしを常套手段とする同党らしい言い分」「国民騙しの狡猾的な手法が透けて見える」と切り捨てている。

また、最近「活用論」以上に大きな波紋を呼んだのが、党首公選制を求めた現役党員の松竹伸幸氏を除名処分としたことだろう。処分理由は松竹氏が著書を出版したことが「分派活動」に該当するというものだったが、この処分については朝日、毎日、産経などが社説で批判し、党機関紙「しんぶん赤旗」がそれに猛反論するといった「バトル」が繰り広げられた。

さらに、松竹氏の主張のもう一つのポイントは、党に現実的な安全保障政策への転換を求めたことだ。具体的には、日米安保条約を堅持し、専守防衛に徹することを軸にすべきだとしている。「赤旗」はこれに対して、「日本共産党の綱領の根幹をなす、国民多数の合意で日米安保条約を廃棄するという立場を根本から投げ捨て」る要求だと批判。また「『専守防衛』とは、自衛隊合憲論を前提とした議論」であり、松竹氏は合憲論を党の基本政策に位置付けようとしていると主張した。

自衛隊が違憲であると強調するたびに、違憲組織を活用するという方針がいかに憲法を軽視しているのかが浮き彫りになる気がしてならない。現実に即した安全保障政策を語れないどころか、語った党員をすぐに除名にしてしまうような政党が、果たして国政政党として信頼に足るのかも疑問だ。

ところで松竹氏と同時期に著書を出版し、志位氏の辞任と党首公選を求めた共産党員がもう一人いる。ジャーナリストの鈴木元(はじめ)氏だ。松竹氏とは対照的に、特に処分を受けていなかったため、一部から「ダブルスタンダード」との批判もあった。しかし鈴木氏の地元の京都新聞などによると、鈴木氏も15日付で除名処分となったという。

「公明」はおそらく統一地方選なども念頭に、共産党が参加する野党共闘について、もしも政権を獲得した場合「共産党的発想と体質、同党が醸し出す反米・反安保・反自衛隊の雰囲気は政権内に陰に陽に影を落とし、外交・防衛・経済・通商など万般にわたり少なからぬ影響を及ぼすに違いない」と結んでいる。

(亀井玲那)