直接原因はエンジン
今回の失敗を含め、JAXAでは最近、良くないニュースが相次ぐ。昨年10月の固体燃料ロケット「イプシロン」6号機や月面着陸を目指した小型探査機「オモテナシ」の失敗、古川聡宇宙飛行士が責任者を務めた医学研究でのデータ改竄(かいざん)などである。H3開発に関わった三菱重工業では、国産ジェット旅客機の開発断念もある。
日経は「懸念されるのが航空宇宙分野における日本の技術力の劣化だ」とし、H3失敗について「ロケット開発体制を根本から見直す必要がある」と訴えた。
産経もほぼ同様で、「失点続き」のJAXAの組織内部に「緩み」や「あせり」がなかったかと問い、H3失敗の技術的検証にとどまらず、組織内の問題点を徹底的に洗い出し、信頼回復を図る必要があると強調。朝日は「企業との共同開発や役割分担も問われるところだ」と幅広い視野からの検証を求めた。
確かに尤(もっと)もだが、仮に打ち上げが成功していたなら、開発体制の問題などは指摘されないだろうから、現時点では失敗の直接の原因――第2段ロケットのエンジンになぜ着火しなかったのか――の徹底究明にとどめるべきで、日経などの指摘は問題を広げ過ぎであろう。
その点では、イプシロン6号機の失敗などには触れなかった読売(8日付)の方が、現時点の論評としては妥当に思える。
ただ、それでも事態は甘くない。第2段エンジンは、各紙が指摘するように、打ち上げ成功率が97・8%という国際水準以上のH2Aロケットに使われているものとほぼ同じで、実績が豊富だったからである。JAXAによれば、地上での燃焼試験でも不具合はなかったという。
読売は、第2段エンジンで「なぜ今回に限って異常が起きたのか究明しない限り、今後の成功は望めまい」とし、商業衛星打ち上げでH2Aが「見劣り」する要因の高コスト体質を改善すべくH3開発で進めてきた「コスト削減策が品質に悪影響を与えたとすれば残念だ」とまで言う。
コスト削減では、より低価格な、自動車など他産業の優れた民生部品を積極的に採用し、約50億円とH2Aの半額に取り組んできた。
もちろん、JAXAでも品質はチェックし事前の燃焼試験でも不具合がなかったということだから、コスト削減が品質に悪影響したかどうかは今後の原因究明の結果を待たねばならず、杞憂(きゆう)であってほしいと願うばかりである。



