日本学術会議のダブルスタンダードに目をつぶる朝日、東京

中国機関と覚書締結

だが、わが国のアカデミズムが朝日や東京が懸念するような「独裁国家」に加担する抜け穴をふさがず、日本学術会議会員選考のための第三者委員会の設置という政府改革案だけを一方的に断罪するのもおかしな話だ。

15年9月7日、北京の中国科学技術協会で、当時の大西隆日本学術会議会長と韓啓徳中国科学技術協会会長は、両機関における協力促進を図る覚書を締結した。

中国科学技術協会とは、中国の最高意思決定機関である共産党常務委員会の下にある「中共中央書記処」の管轄下にある。さらに同協会は、軍民融合を中国全大学の研究や有力な民間企業に呼び掛けるセンターとなっている存在だ。

そもそも「革命は銃口から生まれる」という毛沢東元主席の軍事力重視路線が国家のDNAにある中国は、あらゆる力を糾合して軍事力強化に役立てようとする。中国は戦時を想定し、徴用を含む民間資源の軍事利用を目的とした国防動員体制を整備してきた。

近年語られるようになった「軍民融合」路線は、戦時に限らず平時から民間資源の軍事活用を推進するものだ。そこではアカデミズムの独立より、はるかに国力増強が優先される。

その中国アカデミズムの中心軸的役割を担っている中国科学技術協会と日本学術会議が組むということは、日本のアカデミズムの研究成果が中国に流れ、その研究成果や編み出された技術が軍事転用される可能性があるということになる。

日本学術会議は1950年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明(声明)」を、また67年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発出している。

さらに同会議は2017年3月、日本の大学や研究所あるいは民間企業が防衛装備を生産する事業に関わるのは、「軍事目的のための科学研究を行わない」という日本学術会議の趣旨に反するとして反対声明を発表した。

だがこれでは、日本の軍事開発には関与しないが、中国の軍事開発への協力には目をつぶるということになる。この日本学術会議のダブルスタンダードに目をつぶっている朝日や東京の社説も、かなりいい加減だ。

国益を見詰めた読売

この点、読売は1日付社説「政府と学術会議 双方が具体的な考え方を示せ」で、「科学技術を民生と軍事の両面に活用する重要性は高まっている。学術会議は『軍事研究は行わない』といった旧態依然とした考え方を改め、研究者が防衛政策に関与することを妨げるべきではない」と国益をしっかり見詰めた社論を展開している。

(池永達夫)