H2Aの半額目指す
H3の狙いは「幅広い商業利用につなげること」(毎日など)だ。H2Aが98%という抜群の打ち上げ成功率を挙げながらも、1回の打ち上げコストが約100億円という高額ゆえに海外の衛星・探査機受注はわずか5件にとどまっていたからである。
このため、H3は打ち上げ能力増強へ第1段に新型の液体燃料エンジン「LE―9」を導入し、取り付けるSRBの組み合わせで多様な用途に対応。コスト低減では自動車などの民生品を積極的に採用し、最小形態で半額の約50億円を目指す。産経は、「国産大型ロケットとして約30年ぶりに新規開発された切り札」と評価し「すぐれた可能性を備えている。その大輪の能力開花は、開発陣の責務である」と鼓舞するのも肯(うなず)ける。
当面の予定でも、毎日は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星衛星探査計画「MMX」や、米国が中心になって進める月探査「アルテミス計画」でも重要なミッションを担い、安全保障に関わる情報収集衛星も打ち上げる、などと記す。
軍事だけでなく全地球測位システム(GPS)など社会システムも宇宙に依存しているため、20年時点で約40兆円とされた世界の宇宙産業の市場規模は、40年には約100兆円に膨らむと試算される。現在は、前述したように、スペースX社が安価かつ高頻度な打ち上げで「圧倒的な存在感を示」(日経)し、「市場を席巻している」(読売)のである。
それだけに、今回の打ち上げ中止については「出だしのつまづきは痛い」(日経、毎日など)と各紙。さらに気になる事実として、日経は22年の小型ロケット「イプシロン」6号機が打ち上げ後に司令破壊されたことや、月面を目指した超小型探査機「オモテナシ」が機器の故障で着陸断念したことを挙げ、「日本の宇宙開発への信頼性が問われる事態が続く」と懸念する。



