「中国偵察気球」報道、白い気球に秘められた赤い野心のリアルに迫れず

わが国にも飛来した

これに対し6日付日経社説「米中衝突のリスク顕在化させた気球撃墜」は、「民用のものが不可抗力で米国に進入してしまったという中国の主張には様々な面から大きな疑義がある。中国では航空・宇宙、気象に関わる部門には政府の関与が必ずあるためだ」ときっぱり言い切る。

7日付読売社説も「他国の領空に無断で気球を飛ばすのは、主権の侵害である。それが軍事目的なら、問題はさらに深刻だ。被害者のようにふるまう中国の態度は、常軌を逸している」とした上で、さらに対抗措置も辞さないとする中国に対し「自ら緊張を高め続ける危険な対応だ」とバッサリ切り捨てる。毎日でさえ7日付社説で「『偵察目的』を否定するならば、観測データなど詳しい情報を開示して疑惑を晴らすべきだろう」と真っ当な意見を述べる。

国際法では気球は航空機として扱われる。気球だからといって、他国の領空を勝手に侵犯していい訳がない。中国があくまで気象観測だったと言い張るなら、なぜ事前通知がないまま事が発覚した後の通知になってしまったのか、その説明も必要となる。

なお、同様の気球はわが国にも飛来している。2020年10月に秋田市上空で、21年9月には八戸市上空で確認されている。いずれも軍事基地の周辺であり、イージス・アショアの建設予定地だった秋田新屋演習場と米軍三沢基地に近い八戸上空だった。こうした経緯を見ると、中国の弁明と強硬姿勢は弱みを突かれたがゆえの開き直りとみれなくもない。