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詳細な情報収集可能
米空軍戦闘機が、米本土上空を飛行した中国偵察気球を洋上で撃墜した。五大紙の中で日経だけが、この問題を6日付社説で取り上げた。朝日、毎日、読売社説は、1日遅れの7日付だ。
気球が飛行した米西部モンタナ州には、核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム空軍基地がある。大気圏外を飛ぶ衛星に比べ、気球は地表に近い上空を飛翔(ひしょう)することから、雲で遮断される衛星情報より詳細な画像データを収集できるメリットがあるし、軍事基地から発せられる微細な電波も把握できる可能性がある。建国100年を迎える2049年までに、米国から世界の覇者の地位を奪い取り、北京主導の世界秩序を回復しようと「100年マラソン」を走る中国にとって、こうした機密情報は垂涎(すいぜん)の的だろう。
中国は「気象研究などが目的の民間の無人飛行船」と反論するものの、気球の実態は落下した部品を検証することで間もなく判明するだろう。その意味では、ミサイルによる気球撃墜ではなく、数発程度の銃弾を撃ち込みヘリウムガスを徐々に抜くことで自然落下させ、米国防総省が確信する偵察機器の全容を明らかにすべきだったと至極残念に思う。
なお中国側は、米空軍によるミサイル発射を「中国の民間用無人飛行艇への武力攻撃だ」と反発し「過剰反応だ」と批判した。また「さらに必要な反応をする権利を留保する」と今後の対抗措置をもにおわせ、米当局をけん制した。



